非暴力平和隊・日本

非暴力平和隊実現可能性の研究【第3章 第2節(4)】

第3章 現地諸関係の最善の実践例

ドナ・ハワード、コーリー・レヴィン

3.2 平和隊

3.2.4 派遣団体との関係

現地での業務についての様々なタイプの決定に際し“専門的能力”は何処に存在するか?どの様にしてこれらの決定が十分に迅速になされ、且つ、最大の情報と利害間関係を持っている人達の意向を取り入れてなされるのか?チームはリスクや政治情勢についての生の情報を持っている;外部の委員会は生の情報から離されている。短期派遣チームのメンバーは団体の歴史を理解していないかもしれないし、プロジェクトの常設委員会や国際本部に所属する活動家達ほど非暴力の経験を持っていないかもしれない。本部だけが活動の実態と資金提供者からの要請や広報活動との整合性を取ろうと必死である。これらの結果組織の内部は何時も緊張のし続けである。

PBIは、設立当初より、錯綜した紛争の状況について有効的且つ情報共有型決定を行えるような効率的な組織体になる様懸命な努力を重ねて来た。国際本部はプロジェクトに関連する決定の殆どを半ば独立したプロジェクト常設委員会に委ねている。これらの委員会は年に数回現地でチームとの間で一週間程度の集中した会合を持ち方針やプログラムの戦略を練り上げる。会合は“プロジェクト委員会は現在の現地の実態についてチームから出来るだけのものを吸収し、一方、チームメンバーはより経験を積んだプロジェクト委員会メンバーの長期的課題を明確に理解する――のに十分完璧なもの”である。これらの会合はコンセンサスを重視するPBIの方針により膨大な時間を費やすが、その後の、緊急事態にチームが迅速に決定を下す為の地ならしとなっている。

現地にいる人達の一部には、本部の人間は何が起こっているか分かっていないとか、決定が遅いとか、現地からの意見を真剣に取り上げない等の感情を持っている場合がしばしばある。MPTに送られた混乱したe-mailが不安と疑いの様子を示している:“ここの深刻な情勢が本部の全ての人に十分認識されているのかどうか自信をもてないが、自分がここに来たのは本部が現地のチームを十分にサポートするという信頼があったからだ。”

John HeidはMPTが本部との不十分な連絡に苛まされていることを説明している。そのケースでは、本部が、チームに現地の実情に基づいて判断させないで、現地の村村と連絡を取りチームが何時到着するかについて約束していた事実があり、チームは自分達が安全なように決める力が削がれたと感じた。

チーム或は派遣団のメンバーは派遣団体が頼りに出来るコミュニケーションとその団体を規定する思想に合致した計画を持った信頼しうるチームを編成したと考えて当然である。CPTはかってViequesへの緊急派遣団をあまりにも急いで編成しようとして彼等が良く知っていない人達(そのうちの5人はCPTについての知識が殆どなかった)を募集するという失敗を犯した。派遣団がViequesに到着後24時間のうちに市民の不服従の事態が起こり、チームリーダーと共同リーダーの両方とも逮捕され次に何をすべきか他のメンバーにまかせきりになった。

BPT調整委員会、チーム、派遣団体間の関係の様々な困難がチームの目に克服しがたいものとなりチームの人たちは辞めていった。本部のメモは次のように始まる:“1月11日、BPT調整委員会はKosovo/aチームの5人のボランテイアから彼ら全員はBPTでの仕事をやめることを決意したとのe- mailを受けとった。彼等はその手紙の中で、色々の状況を経験し、BPTは、組織として、ボランテイアとして与えられた責任もプロジェクトの責任も遂行することは不可能であると感じたと説明している。”

BPTの失敗についてクリスティーネ・シュバイツアーが記した内部文書に記載されている構造的欠陥の中で、次の書店がチームと派遣団体との関係を物語っている。

  • 色々な分野で調整委員会の中で責任の明確な所在が明らかにされていない、即ち、いばしば委員会の中で“最後の断”を下すものがいない、又、決定に長時間を要するのみならず時として間に合わないことがある。
  • 現地と国際団体或は現地と調整委員会の間の情報の転送
  • 現地での緊急事態への対応に関し十分な指針と効率性がない

ミル・サーダの試みについての概括的評価の中で、シュバイツアーはチームとその派遣団体間の関係全てに内在する一つの問題に焦点を当てている。「オーガナイザーにとっての大きな問題は多分彼等が負うべき責任の問題であった。プロジェクトを始めたのは彼等なので、彼等は彼らの呼びかけでついてきた人達よりも責任を感じていた。そして当然のことながら非難されるのは彼等なのだ・・・・もしその活動で参加者に何かが起こったんならば。Prozorについて旅を続けることが大きなリスクを伴うことが明らかになったとき、彼等はその責任を取ることは出来ないと感じた。私は、この問題は参加者全てに真の平等を保障していない組織構造上の結果でもあると考える。」この最後の文章が正確に課題を物語っている。現地にいる人達本部にいる人達全てが、責任の重みを分ち合う為には、意思決定におけるタイムリーな情報と平等な取扱いを必要するものである。

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