非暴力平和隊・日本

ARLPIの庭野平和賞受賞について

Date:2004年4月23日(金) 午後7時08分
Subject:2004年庭野平和賞について

NPJ会員のみなさま

君島東彦です。

2004年の第21回庭野平和賞が、NPと縁のあるアフリカ、ウガンダの平和団体、「アチョリ宗教者平和創設委員会」(Acholi Religious Leaders' Peace Initiative, ARLPI)におくれらることになりました。NPスタッフのデイヴィッド・グラントから連絡がありました。この団体はNPのメンバー団体ではありませんが、ウガンダにおいて非暴力的紛争解決にたずさわっており、NPと友好関係にあります。現在、ウガンダへのNPチームの派遣について、この団体から打診が来ています。

以下に、第21回庭野平和賞に関するプレス・リリースを張り付けておきます。

第21回庭野平和賞「アチョリ宗教者平和創設委員会
(Acholi Religious Leaders' Peace Initiative - ARLPI)」に決まる

贈呈理由

(財)庭野平和財団(庭野日鑛総裁、庭野欽司郎理事長)は、「第21回庭野平和賞」を東アフリカのウガンダで紛争解決、社会正義・人権の擁護、異なる民族との平和共存などに取り組む「アチョリ宗教者平和創設委員会(Acholi Religious Leaders Peace Initiative-ARLPI 以下、平和創設委員会)」に贈呈することを決定致しました。世界125カ国、約1000人の識者に推薦を依頼し、「庭野平和賞委員会」で厳正な審査を行い、決定したものであります。「庭野平和賞委員会」は、昨年5月、庭野平和賞20回記念事業として設立されました。各国で宗教協力や平和活動に取り組む10人の宗教者によって構成されています。同委員会による受賞者・団体の選考は、今回が初めてとなります。また「平和創設委員会」は、アフリカ大陸からの初の受賞団体であります。

「平和創設委員会」は、ウガンダ北部、アチョリ地域のイスラム教徒とキリスト教徒(カトリック、オーソドックス、聖公会)による諸宗教協働組織です。1998年の設立以来、宗教指導者を中心に、個人スタッフ、各地域の平和委員会、平和支援者など400人以上がボランティアとして活動に従事し、非暴力による紛争解決、平和を創造する人材育成、紛争被害者の救済などに取り組んでいます。

ウガンダ北部諸民族出身者は英国の植民地時代から前政権まで、その勇猛さから警官や兵士に登用され、軍の中核となった人が多くいます。一方、現在の政府軍は南部の民族が主力です。ウガンダ北部では政府軍と歴代政権の軍の残党を中心にした反政府軍の間でゲリラ戦が激化しました。特に、「神の抵抗軍(Lord's Resistance Army-LRA)」と呼ばれる反政府軍は、政府軍との内戦の中で、一般住民に対して重大な人権侵害を繰り返してきました。住宅、学校、保健センターなど村のインフラを破壊し、殺害や暴行、略奪も相次ぎました。また児童や若者を誘拐も日常化し、その数は2万人に及ぶともいわれます。

殺害、略奪、誘拐を恐れた人々は、家を離れ、より安全な地域に移住したり、キャンプでの生活を余儀なくされています。LRAによる攻撃が長期化した結果、これまでウガンダ国内で100万人以上が避難民となり、その半数を子供が占めています。2002年6月以降、戦闘は激化しており、紛争地域は、従来のウガンダ北部(グル、キトグム、パデルの各県)からウガンダ東部のソロティ、カタキ、カベルメイド、アパックなどの県に拡大しています。治安が悪化し、経済活動が崩壊しているため、食糧を生産することも、購入することもままならない状況が続いています。多くの避難民は、家に戻ればLRAの襲撃に怯えなければならず、政府軍からはLRAと同族であることから「反政府軍に同情的」とみなされるなど、双方の狭間で身動きができないのが現状です。

このような中で、今回の受賞団体である「平和創設委員会」は、ウガンダ政府とLRAの対話を促進するための努力を重ねています。大統領との直接会談を行った結果、「平和創設委員会」が政府側正式代表として指名され、和平交渉の可能性を探るためLRAと接触を持つことにゴーサインが与えられました。またLRA指導部からも政府との仲裁役を果たして欲しいとの要請を受けたことがあります。LRAとは不定期にしか接触できません。また、紛争地域での交渉は多大な困難を伴っていますが、和平への道は十分開かれています。

「平和創設委員会」は、一貫して非暴力による紛争和解を目指しています。平和に向けた「祈りの集会」と行進を主催し、紛争で傷ついた多くの一般市民が参加しています。集いは、虐殺行為の行われた場所でなされ、暴力に対して明確に反対する意向を表明しています。毎年12月31日にはグル、キトグム、パデルの各県でピース・マーチを実施、多くの人々が参加し戦闘の中止と対話の実施を訴えています。

また「平和創設委員会」は、紛争によって被害を受けた地域に平和委員会を設立し、和平を実現するための協力者を養成しています。各地域のボランティアに対し、紛争への対処(交渉と仲裁、調停と和解プロセス)、トラウマの癒し、コミュニケーション能力やリーダーシップの向上などのトレーニングを行い、平和の人づくりが着々と進んでいます。さらに、各地の平和委員会からの情報は、「平和創設委員会」に集約され、出版活動やマスコミへのリポートなどに役立てられています。首都カンパラを中心としたウガンダ南部は比較的、社会・経済状態がよいため、北部住民の苦境に対する関心は高くありません。北部地域への無関心を打破する意味でも、「平和創設委員会」の正確な調査報告は、和平実現に向けた国内外の世論づくりに大きく貢献しています。

避難民キャンプで生活する児童、青年の教育にも重点を置いています。次代を担う青少年の育成は、今後の国の根幹を左右します。「平和創設委員会」では、2001年から教育プログラムを導入し、和平を支える人材の教育を地道に進めています。避難民キャンプ以外でも、経済の破綻により学費の払えない子供が増えていることから、学費援助プロジェクトも展開しています。また誘拐された子供たちが、村のコミュニティーに帰ってきた際に彼らに保護と元のような生活に戻るためのサポートを与える人がいないことも大きな問題となっています。そこで「平和創設委員会」は彼らに必要な保護と支援を与えるため活動しています。

「平和創設委員会」のモットーは、「Together for Peace」(みんなが平和への努力を)です。部族内だけの協力ではなく、地域のリーダー、議会のメンバー、国内外のNGO、軍人、農民などすべての人々との協働することを重視しています。「平和は、多くの人々の参加を得て、かつ長期的な努力を重ねてこそ達成される」ということを基本的な姿勢としています。

「われわれには、ビジョンがある。それは、人々が恐れることなく旅ができるようになり、子供たちは戦闘にではなく学校に行き、女性は暴行や誘拐される恐れがなく農地を耕せる。人々が夕方暖炉の側に座り、自分の家で眠ることができる。反乱軍も赦され、癒され、そして彼らの村に再び参画できるようになる。そして避難民キャンプが取り壊され、兵士は銃なしにパトロールできるようになることだ」。このあまりに日常的なビジョンが、現在のウガンダを取り巻く異常性を象徴的に言い表しています。

「平和創設委員会」の主要メンバーは、「単に人間による活動を行っているのではなく、神と協力している」と語ります。宗教の違いがあっても、地域のすべての宗教指導者が連帯し、暴力を終らせるよう一丸となって声を上げることが、市民の声、そして神の声を明確に代弁することになると確信しているからです。宗教指導者として、人々の僕となり、信仰の証となることを決意し、今も命がけの活動が続けられています。

庭野平和財団は、こうした宗教的信念に貫かれて活動する「アチョリ宗教者平和創設委員会」の人々すべてに深く敬意を表し、またこれまでの多大な功績を顕彰すると共に、さらに多くの同士が輩出されることを念願して、ここに「第21回庭野平和賞」をお贈りするものであります。

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