非暴力平和隊・日本

「国別NGO研究会(スリランカ)」
2004年度第一回研究会出席報告

〜SEWALANKA(セワランカ)代表ハルシア・クマラ・ナヴァラトゥネ氏を囲む会〜

  1. SEWALANKA(セワランカ)は現在スリランカの和平定着に重点を置き、スリランカ政府、LTTE両者共に良好な関係を維持しているスリランカの有力なNGOであり、詳細は末尾の「今回の研究会の目的」を参照、あるいはウエブ・サイト(http://www.sewalanka.org/)を参照のこと。Paffrelとも良い関係にあるとのこと。今最もurgentを要することは何かと言う質問に、躊躇なくPeace Building Programと答え、和平を妨げようとしている両過激派(Extremists)を抑え、LTTEと大統領を交渉の場に着けさせるよう環境作りをすることと明言したことは、SEWALANKA(セワランカ)の自信であり、ハルシア・クマラ・ナヴァラトゥネ氏の確信でもあると思われる。非暴力平和隊の現地の活動を知っていないことは残念であるが、むしろ、このNGOと非暴力平和隊との連携が望まれるのではないかとの印象を持った。即ち、非暴力平和隊のスリランカにおけるMandatesがはっきりしていない現状で、John KnoxはこのNGOと連携することにより非暴力平和隊の役割が新たに定義付けられるのではないかと感じた。
  2. ハルシア・クマラ・ナヴァラトゥネ氏はこのNGOの代表(Chairman)である。サルボダヤで21年間働き、世銀に2年間の後現在の地位にある。聞き取り易い英語を 話し、内容は具体的、マクロとミクロのバランスが取れており、的確、簡潔、単刀 直入、要するに無駄がなく、人脈、経験の豊かさを感じさせる立派な人とお見受けした。10月9日1時から5時半まで上智大学で行われる「アジアの人々と語る日本のODA50年」の会議の出席を兼ねて来日。この会議は上智大学、PARC、JANICが主催し、外務省が後援しスリランカの他にインドネシア、カンボジア、バングラデシュの関係者が出席してODAに対する提言をするとの目的である。来日の直前に大統領招集の会議があり、そこにも出席した。
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  4. 会議内容の概要(主として、ハルシア・クマラ・ナヴァラトゥネ氏の話を中心として)
    • スリランカ和平の状況は、現状は停滞(uncertain)しており,このままの状態(進展がないこと)が推移すると、逆戻りの可能性がある、今リスクのある状況にあ る。停滞していると言うことはnegativeと言うことではない。むしろpositiveの方が多い状況である。大統領はLTTEと交渉をする用意がある。各政党を召集してネゴ を開始する宣言した。しかし、今は与党から離脱したJVPと選挙期間中は統一戦線を組み、LTTEに対する強硬路線で選挙を戦ったので、うまく進めないと波乱要因となる。LTTEとの交渉、和平に反対している過激派が南北にいる。JVPは一方のextremistであり、タミール側にもまた、extremistがいる。大統領は、あるいは和平はdeadlockにあるといえる。こうした状況が続けば、Extremistsがmomentumを得て来るだろう。
    • このようなdeadlockを打開する方策は2つある。自分の来日の目的も、このこと をよく理解してもらうためである。
    • 第1はcivil societyの協調、協同である。共通の目標(common agenda)に 向かって共に協調する必要がある。現在数多くのINGOがフィールドで活躍している。
      1. 国際NGO(INGO)と国内NGO(LNGO)の協調、言い換えればcompetition ではないこと、現状はINGOがLNGOのスタッフを高給で引く抜いたり、LNGOの仕事をINGOがしたり、あるいはINGOが将来の引揚の際にLNGOが力を付けているような努力が足りない。(ケア・インターナショナル、オイスカなどは良い協調の事例である)
      2. INGOは北部、北東部のみ支援しているとの印象を与えている。(昨日の会議で出席者のうち2名を除き全てが、そのように指摘していた。)現に、援助資金なども北部、東北部に多くが投入されている。もっと南部で活躍して欲しい。特に日本のNGOにこのことを期待したい。(JICAは南部に目を向け始めたが、LNGOを通じてではなく、政府機関を通じての動きで限界がある。BAJは南部にキリノッチにあるようなcommunity centerを作る計画あり)
      3. このままでは宗教戦争になりかねない。仏教対キリスト教の構図である。この点にINGOは気づいていない。ヨーロッパはキリスト教国でありヨーロッパのNGOはそのように見られる。その意味でも日本は仏教に理解があるので日本のNGOに南部での活躍を期待したい。スリランカでは仏教徒がextremeな動きをしている。日本の仏教とが何とかできないか。(庭野、アーユース?)
      4. LTTEの人々、あるいはLTTE支配下にある人たちで15歳から35歳の年齢層は、民主主義がどのようなものかが分かっていない。これまで長年、命令を聞くか、さもなければ殺されるかの社会で育てられた。この人たちを南部に連れて行って民主主義の社会、文化を見せ、知ってもらうことが重要である。INGOはこうした活動もして欲しい。SEWALANKA(セワランカ)は何時でも何でもassistする。これはゆっくりと時間をかけてやる仕事である。
      5. 開発プロジェクトにしろ、こうした人道支援活動にしろcivil society、即ちNGOの果たす役割は大きいし効果的である。政府では出来ない。ヨーロッパ諸国政府がNGOに資金援助し、NGOが活動している。日本も早くそうなって欲しい。

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    • 第2はdonorsにお願いしたいことである。現状の取り決めでは、和平交渉とのリンクで資金援助が具体化されることになっており、和平交渉がdeadlockの現状では資金が出ない。資金が出ないことが、逆に和平交渉をdeadlockにしている。即ち、国民は休戦の果実(経済的支援)がないことに対して失望し、行政への信頼を失いつつある。両extremistsが攻撃をするチャンスが広がってきている。今まで和平交渉を支持してきたcivil societyが批判されている。大統領、政府とLTTEは交渉する意思表示をしている。(しかし、先述の選挙公約などのために困難に当面している)和平交 渉をスタートするまでaidを行わないとの方針の再考をお願いしたい。
    • 今最も緊急を要することはpeace building programであり、civil society が協同してextremistsグループに対抗し、キャンペーンをし、LTTEを政府との交渉のテーブルにつけることである。JVPは第3者を通じ日本から月々25万ドルの援助を受け和平交渉の進展に反対のキャンペーンをしている。25万ドルはスリランカにすれば大変な額のお金である。LTTEと繋がりを持っている(working with LTTE)ことを表立って言うことは大変な危険を伴う。色々な団体が(サルボタヤも含めて)LTTEとの交渉を持っているが内密にしている。しかし、SEWALANKA(セワランカ)はLTTEと接触を持っていることを公表している。SEWALANKA(セワランカ)を大いに活用して欲しい。
    • 具体的な提案:SEWALANKA(セワランカ)がスリランカで来年早々、スリランカ のcivil society(LNGO)との1,2日間のワークショップを検討する。

*会議の報告は以上で終わり
 以下は補足説明

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「今回の研究会の目的」(研究会参加呼びかけ文より)

「スリランカ復興開発NGOネットワーク」(下記、注参照)では、このたびスリランカで農村開発、女性のエンパワーメントなどのコミュニティー開発に携わるNGO、SEWALANKAの代表が来日されるのを機会に、第一回会合を次のように開催します。 SEWALANKAは、特に2002年スリランカ政府とLTTEとが停戦に合意した後、北東部のタミール人社会で復興支援活動に非常に活発に関わっています。日本のNGOも多く、スリランカで活動を開始するに当たってSEWALANKAのお世話になっています。

今回の研究会では、現地スリランカCBO/NGOの取り組みについて学ぶとともに、私たち日本のNGOがどのようにして、ともにスリランカの復興開発に、寄与しうるかにつき、議論を深めることができればと考えています。また、現在スリランカ和平の 動きが停滞していることが懸念され、和平を推進するために、日本としてできること を考えていきたいと思います。

 日本政府、ODA実施機関からの参加もいただく予定ですので、ともに議論をしていければと考えております。多くの方のご参加をお待ちしております。どうぞよろしくお願い申し上げます。

注)「スリランカ復興開発NGOネットワーク」について

 現在スリランカで復興・開発の事業を行う日本のNGO、及び今後当地にて事業を行う具体的な計画を持つ日本のNGOが、将来にわたり継続的に活動できるよう、その基 礎を作ることに寄与することを目的として活動しています。

参加団体(2004年7月7日現在、下記12団体が参加)

  • (特活)アジア太平洋資料センター (PARC)*
  • (特活)アジアを紡ぐ会 (ASA)
  • (財)オイスカ
  • (財)ケア・ジャパン
  • 自立のための道具の会(TFSR)
  • (特活)日本紛争予防センター (JCCP)*
  • 反差別国際運動 (IMADR)*
  • (特活)BHNテレコム支援協議会 (BHN)
  • (特活)ブリッジ エーシア ジャパン (BAJ)*
  • マリー・ストープス・インターナショナル (MSI)
  • (特活)ワールド・ビジョン・ジャパン (WVJ)*
  • 非暴力平和隊・日本

※なお、当ネットワークは2003年4月に設置され、2003年9月から2004年3月まで は、外務省の平成15年度NGO活動環境整備支援事業である「国別NGO研究会(スリランカ)」の実施団体となり、上記で*をつけた団体が、この研究会の運営委員会を構成した。2004年4月以降も引き続き、これらの団体がスリランカ復興開発NGOネットワ ーク運営委員会を務める。

※ネットワーク連絡先:ブリッジ エーシア ジャパン(Tel:03-3372-9777)

文責:大橋祐治

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