非暴力平和隊・日本

スリランカ復興開発NGOネットワーク会合

「NGOが見た津波被害と復興の現状」(2005年2月26日)への出席報告

*2005年2月26日の外務省他政府関係団体と非暴力平和隊・日本が参加している スリランカ復興開発NGOネットワークの報告会の報告です。

大橋祐治記

総括

  1. 今回の会議は、平成16年度外務省主宰「国別NGO研究会(スリランカ)」の実施団体に指定され、スリランカの和平に向けての復興計画の一端を 担っている日本のNGO13団体である「スリランカ復興開発NGOネットワーク」が、津波被害と復興の現状についての現調査実施報告を機に政府、関係諸団体と合同で被害調査と復興についてのそれぞれの立場からの報告会を開催したものである。
  2. 報告会の詳細は下記に記してあるので、関心のある方は読んで頂きたい。報告会に出席した感想は;
    1. 大変盛り上がった会議であった。参加者も多く、外務省初め政府関係機関とNGOとの関係が緊密になった、政府のNGOに対する理解が深まった (津波被害援助を切っ掛けとして)印象を持った。
    2. 一方では、3月5日の「最終資料提出のためのNGOだけの会議」では、参加者の本音が聞かれ、まだまだ政府の理解(NGOを活用することの)が進んでいないことを知らされた。今後、一層このネットワークでまとまって活動することの重要性を感じた。
    3. 報告を聞きながら、非暴力平和隊のスリランカでの活動並びに非暴力平和隊・日本の「ネットワーク」に参加して得るものは何かなどを考えていた。
    1. 非暴力平和隊・日本にはコロンボの本部から情報はほとんど送られてきていない。(津波被害関連だけではなく、非暴力平和隊としての活動の現況)Mel Dancanから1月末の報告が最後であるように記憶している。非暴力平和隊・日本のあり方、進め方にも関連し問題点の一つであろう。FTMは毎日本部に報告を義務づけられていると聞いている。
    2. William Knoxは、アナン国連事務総長との会談に参加したとの情報があった。しかし、いわゆる草の根の市民活動、ローカルのNGOとどの程度の接触を持っているのか。11月に来日した現地有力NGOの一つセラワンカのトップは非暴力平和隊のことをまったく知らなかった。
  3. 調査団に現地参加した大島みどりさんは、<総括・感想・コメント>で次のように書いている。
    • バティカロアでのUNHCRとの面談は、ジャフナでのNPの活動の示唆(ガイダンス)となる、有効なものだった。
    • 日本のNGOのスリランカでの活動(津波災害救援以外)を知る上で、大変役に立つツアーとなった。
    • 日本のNGOがスリランカで現地パートナーあるいは地元の人々と共同事業を行うに際しての、問題点や工夫、そしてその解決方法(の模索)を知ることは、NPの今後の活動にも大変参考になった。日本におけるスリランカ支援のNGOネットワークおよびその現地事務所、そして地元パートナー団体、関連団体の人々と出会うことができ、今後のNPの活動のネットワークを広げる可能性につながった。
  4. 非暴力平和隊・日本がネットワークに参加しているのは大島みどりさんの報告にもあるように有益であると思う。それが、今後の現地でのWilliam Knoxが指揮する非暴力平和隊にどのようにフィードバックされるのか、今後注目していきたい。
  5. 感想は以上です。詳細は下記をご参照ください。

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  • 司会:BHNテレコム支援協議会 福島文枝
  • 開会挨拶: 外務省経済協力局城所(キドコロ)室長
  • ネットワーク紹介及び平成16年度外務省主催「国別NGO研究会(スリランカ)」事業報告:
     BAJ 新井正弘事務局長
  • 外務省の津波救援方針: 外務省アジア大洋州局南西アジア課 畑中
  • JICAの津波救援方針:南西アジア地域チーム長 西宮
  • JBIC(国際協力銀行)の津波救援方針: 開発第2部3班
  • 報告
    「NGOが見た津波被害と復興の現状」
    ‐平成16年度外務省主催「国別NGO研究会(スリランカ)」合同現地調査報告
    IMADR森原、JCCP南香子
  • 津波救援の現状と評価、提言: PARC 井上礼子
  • 「津波後、NGOは何を考えどんな活動をしているか」:
     NGOネットワーク参加各団体及び参加予定団体からの活動の紹介
  • 質疑応答:
  • 閉会挨拶: JCCP 小林龍夫事務局長

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開会挨拶

外務省経済協力局城所(キドコロ)室長

  • 外務省の国別NGO研究会の対象を2004年度も引続きスリランカとしたことは良い選択であった。
  • 日本の支援が一番早く、且つ実行を伴った(インドと日本が一番乗り)
  • オールジャパンとしての救援活動が出来た。救援物資は新潟中越地震の為の備蓄物資(食料・医療品など)を地方公共団体の協力、民間航空会社、防衛庁の輸送手段で運搬
  • バンダアチェでは現地の高い評価を得、モルディヴでは1988年の日本政府援助による防波堤が被害を最小限にとどめることが出来た。
  • NGOに対する津波関係予算として27億円の予算を成立させた。

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ネットワーク紹介及び平成16年度外務省主催「国別NGO研究会(スリランカ)」事業報告

BAJ 新井正弘事務局長

NGO13団体がネットワークを組み、スリランカの和平に向けた復興開発に向けて活動している。外務省の国別研究会の対象となり、外務省、JICA、JBICとも連携して月一回の会合を開いている。現在、津波被害の緊急支援を中心に動いている。スリランカでは津波発生後、それまで600団体であったNGOが6,000まで急増したとのことである。NGO間の協調が問題となっている。

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外務省の津波救援方針

外務省アジア大洋州局南西アジア課 畑中(配布資料に従って説明)

  • 津波被害に対する日本政府としての対応を報告。政府として総額500億円の援助を決定したが、内訳は二国間ベースが250億円、国際機関を介した支援が250億円である。二国間ベースは更に(1)緊急支援(国際緊急援助隊、無償資金協力、緊急援助物資の供与)と(2)復旧・復興に分けられるが、(1)については既に実施済みであり(2)についてはニーズ調査を行っている。国際機関を介した支援は国連の諸機関を介したものである。
  • 問題点:(1)2003年6月の東京宣言で「支援は和平の進展にリンクする」原則が打ち出され、欧米諸国はこの原則を貫いている(ネガティブ・リンケージ)が、日本は現在の緊急事態に鑑み、ポジティブ・リンケージ(和平を達成するために資金を供与する)の考えをとっている。(2)援助に関連して紛争が再発しないような配慮が必要であり、スリランカ政府とLTTEの支配地域それぞれの状況を十分調査しながら実施することが必要。

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JICAの津波救援方針

南西アジア地域チーム長 西宮(配布資料に従って説明)

  • 支援の基本方針として、緊急ではあるが中・長期的視点に立った援助施策を考えている。即ち、ジェンダー問題、貧困対策、自立支援、クロス・カッティング・イシューなどを配慮し、市民のために、市民と協力して(with people for people)被害者の視点を配慮した援助をしている。現在は、短期から中期への切替時期と認識している。
  • サルボダヤ、セワランカ、YMCA等の現地NGOは農漁村での永年の実績があり、特にLTTE支配地域などでの復興支援では行政と住民との間に入って意見調整をしている。住民支援活動は現地NGOを介しての支援が最も現実的である。一方、現地NGOはJICAの契約するコンサルタントの下請けを嫌っていて、JICAとの直接の契約を欲しているようで、この点をどうするかが課題である。
  • 日本のNGOと現地NGOとのつながりが、今回の住民支援に果たした役割は大きい。開発調査の実施に於いて日本のNGOとJICAが協力出来るような仕組みを整えることが有効である。

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JBIC(国際協力銀行)の津波救援方針

開発第2部3班(配布資料に従って説明)

  • 現在、世銀、ADB(アジア開発銀行)と共同してニーズアセスメント調査を実施中。従って、別個に個別調査をすることは現地側の負担になるので注意が必要。
  • 円借款による今後の復興支援に関し、平和構築の視点(民族・地域バランスへの留意、援助の政治的利用への留意)、現地市民社会・NGOを巻き込んだ支援の実施に留意し、箱物にならないよう留意したい。
  • BAJ、PARCに調査を依頼している。

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報告
「NGOが見た津波被害と復興の現状」
‐平成16年度外務省主催「国別NGO研究会(スリランカ)」合同現地調査報告

IMADR森原、JCCP南香子

ネットワーク加盟13団体からなる調査団が1月29日より2月9日まで現地調査を実施した。28ページからなる報告書に従って、写真を含めて報告。大島みどりさんが非暴力平和隊・日本を代表して現地参加している。この報告書は津波被害と復旧に関する現地調査であるが、3月中に完成予定の、スリランカの和平に向けた復興開発に向けての包括的な活動報告「16年度国別NGO研究会(スリランカ)」の一部として含まれるものである。

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津波救援の現状と評価、提言

PARC 井上礼子

現状と評価

  1. 漁村・貧困層の格差が広がる可能性
  2. 北部では内戦からの復興が開始され、国連による調整メカニズムが働いている。地方レベルの行政と国連との調整も良い。緊急援助についてもLTTE支配下では一元化されている。南部は民間中心で発展してきたので貧富の格差が大きい。
  3. 国際NGO(欧米系)が大規模に入っており、LNGOとの間に矛盾をきたしている。住民が受身になっている。スリランカ政府の支援が多いほど住民が受身になる。

提言

  1. 最初から長期的な視野での復興を計画し、経済格差の固定化を避ける
  2. 地域社会主体の復興(地元団体)
  3. 和平の推進に結びつくような支援を:現在の混乱・緊張が紛争につながらないように
  4. 国際NGOの調整(ローカル・レベルで日常活動を通じての話合いが有効)
  5. 日本のNGO間での協力(今のNGOネットワークは有意義であることが実証された)とLNGOとの協力

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「津波後、NGOは何を考えどんな活動をしているか」

 NGOネットワーク参加各団体及び参加予定団体からの活動の紹介
 各加盟団体より1ページの資料に基づき緊急援助に関する活動を報告。今後加盟を検討中のピースボートと「市民による海外協力の会」からも同様に報告。

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スリランカ大使館 マニシャ参事官(Manisha Gunasekera)の挨拶

  1. 津波災害に対し、24時間以内に対応してくれたのはインドと日本であり感謝している。また、最大の援助のコミットをし最初にアクションを起こしてくれた。
  2. 日本のNGO活動は過去2年間で非常に多くなり、またコミットメントが目に見える形になっている。今回ネットワークに入っていないNGOも今日参加していただき感謝
  3. 現地のNGOは確かに今回の支援で先頭に立って働きを見せたが、国際社会、特に日本からの支援があって強化、拡大されたものである。
  4. 2週間前にはスリランカより財務大臣も訪日し、計画が実施に向けて動き出した。

以上

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