非暴力平和隊・日本

講演会報告『東アジアの若者のウェーブを憲法9条から』

講師:正木高志
9月5日文京シビックセンター

9月5日(土)東京の文京シビックセンターにて、非暴力平和講座が開催されました。講師にお招きしたのは、正木高志さん。正木さんは、九州熊本の阿蘇山録に「アンナプルナ農園」をひらいて農業を営むかたわら、講演や執筆、インド哲学の翻訳、作詞・作曲など多彩な活動を行っています。2007年春分から夏至にかけて、若者たちとともに、木を植えながら島根県出雲から青森県六ヶ所村まで、原子力発電所のある地域を歩く〈walk9/おむすび巡礼〉を企画、実行されました。そして今年2009年9月には、日本・韓国の若者たちとともに、100日間の韓国一周謝罪の旅〈walk9/韓国巡礼〉を行います。

 今回の講座は、この〈walk9/韓国巡礼〉の企画を知り、何度か若い方々のミーティングに参加してきたわたしが、この企画が持つ夢や希望、参加者の暑き思いと行動力に共感を覚え、一人でも多くの方々にお知らせしたいと思い、韓国出発直前のウォーク発起人正木さんにお願いして実現したものです。いつもはライブ・ハウスや比較的ラフな雰囲気の場所でトークされる正木さんは、非暴力平和隊日本という名前に、「少し硬い(難い?)感じの名前の団体名ですねぇ」と笑いながら、ブッダによる作詞(お経)、正木さん作曲によるうたを、ジャンベ(ドラム)を叩きながらうたい始められました。
以下は、お話の内容の要約です。

‘07年に〈おむすびwalk〉という、出雲から青森の六ヶ所村まで日本海に沿って木を植えて歩くピース・ウォークをやりました。原発がたくさん立ち並ぶ海外線を歩いたのですが、このとき「もし戦争が起こったら原発がねらわれる」ことを実感しました。これらの原発が戦争で破壊されれば、日本だけでなく中国・韓国も含めたアジアがすべて、何千年・何万年という年月傷つくことになるのです。日本の西側には「日本海」がありますが、この海は韓国や中国では当然のことながら「東海」などという別名で呼ばれています。この海を「日本海」でも「東海」でもないアジア共通の呼び方に命名できないだろうか。「国家」という地球に敷かれたカーペットの上に書かれた呼び名ではない帰属意識、本質的なアイデンティティを人々が持たない限り、「日本海」は共通の名前を持たず、戦争はなくならなりません。今回9月から若者たちと韓国を歩くのは、日本人として謝罪をしたいと思ったからです。謝罪から「国家」を超えたアイデンティティが生まれ、戦争はなくなります。
 昨年4月、3度目の沖縄訪問で初めて平和公園を訪れ、大地にぬかずいて祈ったとき、沖縄戦で亡くなった人々の苦しみが、その叫びや大地から沸きあがる血の臭いとともによみがえってくるような体験をしました。その後読んだ資料から、沖縄戦で犠牲になった民間人約15万人のうち、1万4千人が、朝鮮半島から強制連行された人々だと知りました。民間人でさえも犠牲者なのに、家族からも故郷からも強制的に離れさせられ、亡くなっていった彼らの苦しみはどれほどだったでしょう。その事実を知り、これは韓国を訪れなくてはいけないと思いました。そこで東京で出会った在日韓国人の方々とともに7月に初めて韓国を訪問しました。訪韓最初の3日間は、身もすくむような思いをしました。日本による苦しみを体験された年配の方々の、日本人に対する視線がとても厳しく感じたからです。しかし、後半3日間の韓国の若者たちとの出会いは、まったく違ったものでした。彼らは日本による苦痛の歴史については、あますところなく教育を受けています。けれど、彼らが通常読んでいる本、旅の話や音楽・楽器に興味を持ち、目を輝かして乗り出してくる様子などは、日本の若者たちとまったく変わりません。彼らはまさにつながりを求めた「地球人」そのものでした。
 訪韓の最後に国立博物館を訪れたわたしは、(中国)大陸、そして朝鮮半島の高度な文化・文明が、低きところへ水が流れるごとく、古代日本に渡っていったことをこの目で感じました。そして現代日本の歴史教育が事実とはまったく異なるものであることに気づきました。日本書紀に始まる創られた歴史が、江戸時代の国学、皇国史観に引き継がれ、明治維新を経て今なお、わたしたち日本人に教育されています。平和を語るには、この歴史のもつれをほどいていく必要があるのではないか、そしてそのために、最後に罪をおかした側、つまり日本が謝罪する必要があるのではないでしょうか。では、謝罪とは何か。それは日本が自らの手で憲法9条を(国民投票で)再度選びなおすことです。
 西洋文明が崩壊し、新しい文明が誕生する時期に、いま差し掛かっています。西洋文明はたくさんの良いものも作り出しましたが、「戦争」と「環境破壊」という大きな問題を生み出しました。国家主義では戦争を解決することはできません。そして地球文明とでも呼ぶべき新しい文明の創出を助けるものは、ネイティブ・マインドであり、ブッダのマインドです。文化の融合・統合という考え方です。東アジアが手をつなぎあい、ハワイからヒマラヤにいたる地域の中で、日本が重要な役割を果たすときが来ています。世界の平和のツボは38度線にあり、その天岩戸を開けるためには日本が憲法9条を選び直さなくてはなりません。全部をひとりでやることはできません。じぶんができること、やりたいことをやっていけばよいと思います。それが今回わたしが歩く理由です。

正木さんのお話はカリンバの演奏とやさしいうたで終わりました。

【参考】「蝶文明」(さんこう社);〈walk9/韓国巡礼〉 http://www.walk9.net/ 

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