非暴力平和隊・日本

朝日新聞2005年1月7日:夕刊

突然の津波、救援に奔走 スリランカで邦人2女性 インド洋津波

ジャフナ(スリランカ北部)=本田雅和

津波被災者への救援の手がなかなか届かないスリランカ北部で、日本のNGO(非政府組織)の女性2人が活動を続けている。漁村の開発支援をしている「アジア太平洋資料センター(PARC)」の今成彩子さん(24)と、紛争抑止などのために駐在している「非暴力平和隊(NP)」の大島みどりさん(43)だ。

インド洋津波が襲ったスリランカでは、約3万人が死亡、約21万世帯83万人が家を失った。

一昨年から昨年にかけてスリランカに赴任した2人は紛争は覚悟していたが、津波は全くの予想外の事態。首都から離れた地で、偶然居合わせた自分たちに何ができるか手探りの毎日だという。

今成さんは、漁村の冷蔵技術の指導や漁協組合の支援などに取り組んできた。津波を知った今成さんの対応は早かった。

長年スリランカ問題に取り組んできた中村尚司・龍谷大教授(PARC代表理事)も現地を訪問中だったため、2人で手持ちの金や事務所の緊急資金15万円を集め、コロンボで抗生物質などの医薬品や包帯など約500人分を調達。陸路ジャフナに運び、現地NGOに引き渡した。

さらに連絡が取れない漁村を回った。PARCがこれまでに援助した漁網が、浜辺のがれきの中で無残な姿をさらしているのを見るのはつらかったという。

避難所の漁民たちは住宅の再建もさることながら、自立のための一日も早い漁業の再開を求めている。

妻を亡くしぼうぜんとする老人を慰める今成彩子さん=スリランカ・ジャフナ郊外の避難所で、本田写す

今成さんの調査を受けて、PARCは漁網や漁船の援助計画を立て、日本政府に資金援助を求めることにしている。

今成さんは大学でカンボジア語を専攻し、PARCに参加、昨年5月にジャフナに派遣された。今回の災害に、「死をこんなに身近に感じたことはなかった」と話す。

大島さんは米国の大学で演劇を専攻した後、01年に発足したNP日本グループに参加した。NPは紛争地に市民が赴き、監視や調停をすることで暴力を未然に防ごうというグループだ。スリランカに派遣され、各国からの12人とともに、4カ所に分散駐在していた。

津波の後、ジャフナの病院にも重傷者が続々と運ばれてきた。現地のNGOや教会関係者とともに救援活動を手伝ったり、けが人の話し相手になったりしたが、無力感も抱いたという。

「紛争監視型」のNPは災害の際に緊急に使えるような予算がなく、小回りがきかないからだ。「理念より行動力だ」と痛感したという。

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