非暴力平和隊・日本

スリランカ通信(3)2003.11.2

スリランカ通信3号/第2回フィールド・トリップ報告

2003年11月2日
大島みどり

この通信は私の個人的な感想や考えを述べたものであり、Nonviolent Peaceforceあるいは非暴力平和隊・日本の公式見解を示すものではありません。転載・転用をご希望の際は、筆者あてご連絡ください。

Field Workers

今回の通信に登場したコロンボ・オフィスの3人。向かって左がチーム・マネージャーのJan Passion、真ん中がプロジェクト・ディレクターのWilliam Knox、右側がプロジェクト・アドミニストレーターのスリランカ人女性Dharshini Croos。(NPJ事務局注)

こんにちは、みなさま。

早いもので到着してから1ヶ月以上が経ちました。
先日(10月31日)夕方2度目のフィールド・トリップで南部マータラ(Matara)方面から帰ってきたところです。11月2日の昼までホテルに滞在し、再度コロンボ市内の研修施設に移動します。トレーニングの最後10日あまりをそこで過ごすことになりそうです。

正直言って移動が多いのには疲れます。最初の2週間以降(第1回目のフィールド・トリップから)は、大きな荷物をNPオフィスに置いて、最小限の荷物で移動を続けていますが、不便でもあり、精神的にも落ち着きません。

洗濯は手洗いなので、最初のフィールド・トリップでまず初めに買ったのがバケツでした。わたしは手洗いはまったく苦にしませんが、洗濯物を吊るして乾かすのが悩みの種です…。まぁそんなわけで、移動はやっかいです。

それはともかく、まず、前回の通信で「やっぱり辛い」とタイトルを書いたところ、数名の方々から、「『からい』を『つらい』と読んだ」というお返事をいただき、大変恐縮しています。

コンピュータばかり使っていると、つい漢字を忘れるのと同時に、無意識に漢字変換しているため、『からい』と『つらい』が同じ漢字であったことなど、すっかり忘れていました。「やっぱり『つらい』のか〜」と心配・同情してくださったみなさま、ほんとうにすみません。

まだ『つらい』目に遭うほどのことをしていませんので、ご安心ください?!(困惑したり、気に入らなかったり、憤慨したりすることは、たびたびありますが…)

今回のフィールド・トリップは、27日月曜日にコロンボを発ち、わたしたち南部チーム(米国の女性Rita、ガーナの男性Frank)のほかに、NPコロンボ・オフィスのスタッフでチーム・マネージャーのJan(米国男性)と、わたしたちを支援するスリランカ人の女性(トレーニングの初めころに、スリランカの現状についてレクチャーをしてくれた)が同行、ドライバーを含めて6人のメンバーでした。

訪問先は、Janが9月初めに下見調査で訪ねた団体・個人を中心に、前回のフィールド・トリップで会えなかった団体・個人のいくつか、そしてこれまで出会った人たちから紹介を受けた人々でした。現地の細かい事情を知らないわたしたちよそ者にとって、そこで活動する人々からの直接の推薦はとても役立ちます。紹介を受けて訪ねると、訪問先の人々もわたしたちを快く受け入れてくれますし、わたしたちもまた、事前の情報(その人・団体が地域でどのような活動をしているかなど)を元に、信頼して話し合いを持つことが出来ます。

第1回・第2回のフィールド・トリップを通して感じた印象は、南部ではシンハラ・タミル・イスラムという民族・宗教が原因で起こる対立・紛争よりも、個人間あるいは小さなグループ間で起こる諍いが多いということです。

そしてその原因となるのは、主に権力を持つ、あるいは持とうとする政治家たちであり、彼らを取り巻く人々の政治的なかけひき・えこひいき・嫉妬です。そして特に大学を卒業したての若者たちが直面する就職難を中心とする、将来に希望を持てない経済的貧困です。おそらくスリランカの南部だけではないのでしょうし、もっと大きく言えば(日本を含めた)ほんの少数の国々を除く多くのアジアの国々に共通することでしょうが、バンで町から町、村から村を移動していると、本当にたくさんの成人男性が家の外で仕事らしい仕事をせずに、おしゃべりをしている風景に出会います。日本に居てはあまりなじみのない風景ですが、ここではそれはまったくめずらしいことではありません。

わたしは何もスリランカ(あるいはどこでも)の人々がみな日本人のようにネクタイをし背広を着て毎日会社に通うことが必ずしもよいことだとは思いません。ただ、仕事がない(=することがない)ことが、アルコール依存症の引き金になったり(スリランカ全体、そして特に南部で大きな問題になっているそうです)、就職問題が政治的に利用されたり、嫉妬の種になったり、そして最終的に暴力的な行為・行動に結びつくのが、大きな問題なのだと思います。

南部の問題の主原因が貧困・教育問題を含めた政治的なものであるというのは、おそらく北部(ジャフナ)・北東部(トリンコマリーの南)・東部(バティカロアの北部)のタミルvsシンハラ、タミルvsイスラム、シンハラvsイスラムという民族・宗教的対立を主に扱う他の3チームと違い、わたしたちNP南部チームが活動の焦点を絞るのに、困難さを加えるような気がします。問題自体の難しさについては、比較のしようもありませんが、扱う問題の種類が異なるのはあきらかです。

誰・どの団体がどのような立場でどのような活動をしているかをしっかり見極めないと、中立という立場を維持するのが難しいですし、またコミュニティ内・コミュニティ間の問題でないがために、いつどこでどんな暴力が起こるかの予測もつけ難いかと思います。2回のフィールド・トリップで特に多く耳にしたのは、人々、特に女性が何か不当な待遇(子どもの教育問題など)を受けたときに、警察に訴えに行くのをためらう(問題を取り上げてもらえない、あるいはさらにひどい扱いを受けるなど)というようなたぐいの話と、マータラから北へ2時間以上入る山間部に住む(その多くは紅茶のプランテーションで低賃金で働く)タミル人に対する、教育を中心とした差別的待遇でした。(もちろんほかにも細かい話はたくさんありますが。)

つまりこのふたつをとっても、最初の警察や行政に対する苦情を中心とした問題は、マータラやその他の町で頻繁に起こる問題ですし、後者のタミル人差別は主に、山間部地帯で起こる問題で、たった3人の南部チームでカバーできる範囲をすでに軽く越えています。どこに事務所兼住居を定め、どんな(誰を対象とする)活動に焦点を当てていくか、これからさらに調査とプロジェクト・ディレクター(William)やチーム・マネジャー(Jan)を含めたわたしたちチームの検討が必要と思われます。

つまり、11月中旬に最終的に南部に入っても、しばらくの間はゲストハウスで仮住まいをしながら、調査・訪問を続け、なおかつ落ち着き先を探すという、洗濯物も乾かすのに苦労する(?!)状況を続けることになるでしょう。

みなさまお元気で。

大島みどり

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