非暴力平和隊・日本

スリランカ通信(9)2003.12.27

スリランカ通信9号/それでもクリスマス?!

2003年12月27日
大島みどり

この通信は私の個人的な感想や考えを述べたものであり、Nonviolent Peaceforceあるいは非暴力平和隊・日本の公式見解を示すものではありません。転載・転用をご希望の際は、筆者あてご連絡ください。

遅ればせながらメリークリスマス! しばらくマータラやコロンボの町の喧騒から離れていたので、世の中の動きにとても疎くなっています。それでも、きょうコロンボに戻ってみれば、どうやらスリランカでもクリスマスは、パーティやプレゼント交換(ショッピング)の意味合いのほうが、本来の聖なる日という意味より一般的には強いようです。

イラクでフセイン(元?)大統領が捕まったり、(少なくてもわたしが受け取っているメール上では)自衛隊のイラク派遣に対する論議が高まっている日本でも、状況は同じでしょうか? インターネット・カフェで回線が通じるか、途中で切れはしないか、そして支払額を気にしながらではなく、きょうはNPのコロンボ・オフィスから、久しぶりの通信です。

1.新居

前回のお便りで、何も揃っていない新居のご報告をいたしましたが、コロンボからの送金が11日にやっとのことで届いた時には、もういろいろなものを買う時間もありませんでした。その上電話回線を引くのに、家主さんに前渡し金をお渡ししたため、お金があっという間になくなってしまいました!

12日にはマータラの北部2時間半ほど入ったところにあるデニヤヤという町で、今年5月の大洪水で被害にあったシンハラ人とタミル人のための共同生活村「ピース・ヴィレッジ」というプロジェクト(これについては、また別途報告させていただきます)のオープニング(開所式)があり、それに参加するため朝7時半にはマータラを出発しました。クネクネと曲がる山道をバンで行ったのですが、これまで10月に2度ほど訪ねたときは「シンドイなぁ」とは思いながらもなんとか上っていった山道が、今回は運転がかなり荒く、車酔いに冷や汗をかきました。車を降りたときには、しばらく動けず話すこともできませんでした。「ピース・ヴィレッジ」のある山間はとても美しく、またタミル人から話を聴いたりする機会も持てるので、これからも訪問のチャンスを望んではいるのですが、往復にかかる時間と車酔いのシンドさを思うと、ちょっとためらってしまう気持ちは隠せません。

開所式でなにも特別なことをしたわけではないのに、夕暮れにマータラに戻ってきたときにはぐったりとしていて、家具店から洋服ダンス(のようなもの)が届いていたにもかかわらず、2ヵ月半、場所から場所へ運び続けたスーツケースからすべてを取り出す気力もまた時間もありませんでした。そして翌13日からのNPスリランカ・プロジェクトのミーティングとトレーニング参加の準備のために、新たな!荷造りをするのが精一杯でした。

ミーティング/クリスマス休暇が明けた29日以降に、再度新生活準備を始めることになるでしょう。わたしたちの留守中に電話回線が引けていたら、なによりうれしいのですが、それはあまり期待しないことにします…。

2.12月のミーティングとトレーニング

13日から23日までは、スリランカの古都キャンディの近郊にあるコトマレ(日本語でどのように書いているのかわかりませんが)という場所で、ジャフナ、トリンコマリー、バティカロア、マータラに分かれているフィールドワーカー全員が集まり、非暴力コミュニケーション・トレーニング(Nonviolent Communication Training、略してNVCトレーニング)を受け、またこの1ヶ月の各チームの報告や問題を話し合う機会となっていました。コロンボのオフィスからは、チーム・マネジャーのジャンが全期間加わり、プロジェクト・ディレクターのウィリアムは、NVCトレーニングを除いた期間参加しました。NVCトレーナーは、長らく米国に住んでいたスリランカ人の女性と、スウェーデンの女性。NVCトレーニングがどんなものか、わたしはとても楽しみにしていました。

13日、朝5時過ぎに(始発の)マータラ駅についたわたしたち3人は座席をとり、明けていく空と活気付いていく周辺の町・村の様子を、半分眠りながら眺めつつ、列車に揺られ(文字通り揺れました)一路コロンボへ向かいました。(マータラ・コロンボ間は、列車で約4時間。座れれば問題なし。ただしコロンボからマータラに向かう際は、座席がとれないことが多いらしい。指定席はなし。)

コロンボのオフィスにはバティカロア・チームを除いた各チームが集まることになっていたので、1ヶ月ぶりの再会をみなで喜び、午後2時過ぎに定員オーバーの人と荷物を載せて、バンはコトマレへ向かいました。

5日間のNVCトレーニングの詳細についてはまたどこかでご報告する機会があるとよいのですが、わたしが役に立つと思った技術のひとつは、人の話を聴く際に、じぶんの理解を確認するために「いまあなたが言ったことはこういうことですか?」と相手が使ったことばや言い回しを、繰り返すことです。あるいはじぶんなりに解釈をして言い返すことです。これは簡単なようでやってみると難しかったりします。

わたしたちは相手のことばを聴いているようで聴いていなかったり、あるいはじぶん勝手な解釈を加えているからです。相手の話の最中に後を横切った人がいれば集中力が途切れて、聞き逃すのはたやすいことです。勝手に解釈していれば、相手が「いいえ、わたしはそんなことは言っていません。」と再度言い直してくれるかもしれません。

もちろん時間がないとき、仕事に忙殺されているとき、そんなことをしているひまはないかもしれません。でも、もしわたしたちが少し話しにくいあるいはコミュニケーションに問題があると思っている相手と話すとき、この方法は役に立つかもしれません。

じぶんの思いや感じていること(怒り、いらいらなど)を一瞬わきに置いて、「あなたの言ったことは…ですか?」と返す技術は、対立を客観的にみる上でも参考になると思います。試してみてください。

もうひとつ役に立ったのは、コミュニケーションを促す際に確かめる4つのポイントです。
1.観察(observation)
2.感情(feelings)
3.必要なもの/欠けていること(needs)
4.依頼(requests)

1の「観察」はたとえば相手が言ったことばでじぶんが怒ったときに、その相手の言ったことば、たとえば「おまえは性差別者だ」ということば、あるいは相手の声がいつもより大きくなった、といったような観察を言います。なるべく正確な観察を言います。2の「感情」というのは、そのときじぶんがどう感じたか。怒り、悲しみ、などの、これもできるだけ単純な感情をとらえます。3の「必要なもの/欠けているもの」は、そのときじぶんが必要なのに欠けてしまったもの、たとえば相手との『つながり』や相手から『尊重されること』というようなことを、確かめます。もし可能であれば、じぶんだけでなく、そのとき相手が欠いていたもの、(相手のことばの裏側を読む?)やはり『つながり』だったり『大切にされること』を想像します。

そして最後に4の「依頼」、リクエストを出します。つまり「いまわたしはあなたのことばによって、こう感じていて、こういうものが必要なので、これこれを依頼します」というようなことです。この依頼は、できるだけ明確で、形になるものでなければなりません。

「もっとわたしを尊重してください」というよりも、たとえば「ファースト・ネームで呼ぶのではなく、ラスト・ネームにMr/Msをつけて、呼んでください」といったような、相手が納得のいく説明をしたほうがよいということです。

うまくみなさんにご説明できたとは思えませんが、こんなかんじで5日間のトレーニングが行われました。またこの5日間で、チーム内で起こっているさまざまな問題や対立についても、NVCトレーナーがファシリテーターとなって、介入してくれました。これは言い換えれば、第三者、それもNVCの知識や技術を持った人間が、間に入ることで対話が進むのをじぶんが体験する、よい機会となりました。

NVCトレーニング以外のNPとしてのミーティングでは、これまでの1ヶ月の活動で感じたり思ったりした問題活動内容から生活全般までについて話し合ったり、各チームの報告をしたり、その他事務的な話し合いをすることで、あっという間に時間が経ちました。23日の朝食後、わたしとチーム・メイトのリタを除く全員がバンでコロンボに発ちました。

さて、ほかにも書こうと思ったことはあるのですが、ここまででかなり長くなってしまったので、それは次回に回すことにします。新年前にもう1度お送りできるかもしれません。

日本ではもうそろそろ年末のお休みに入るころでしょうか。
忙しくてもあわただしくても、それはそれでなんだかわくわくする日本の年末・年明けを、なつかしく思うコロンボから、きょうはお便りさせていただきました。明日、28日バスでマータラに帰ります。

大島みどり

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