非暴力平和隊・日本

スリランカ通信(35)2004.11.3

スリランカ通信35号/雨の日は休み

2004年11月3日
大島みどり

この通信は私の個人的な感想や考えを述べたものであり、Nonviolent Peaceforceあるいは非暴力平和隊・日本の公式見解を示すものではありません。転載・転用をご希望の際は、筆者あてご連絡ください。

こんにちは。モンスーンの季節がやって来て、さすがのスリランカでも半そででは少し涼しいくらいの日が、何日かありました。夜は扇風機なしでも眠れるくらいですが、湿気が多く、洗濯物が乾かないので、扇風機をかけます。するとシーツ1枚(をかけているだけ)では夜明けごろ寒くて目が覚めます。もっとも、この2週間ほかの理由で夜中に何度も起きなくてはならないのですが、それはのちほど。

きょうはジャフナでの生活で少しマータラと違った部分をかいま見たものを書いてみたいと思います。

1.「お母さんは?」

マータラでこんな経験をしなかったのが、逆に珍しかったのかもしれませんが、ジャフナに来て以来何度か男の子に見間違われました。(これからも続くのかもしれませんが?)ある日行った床屋(ムトゥールで床屋に行ってみたら、案外安く、そして簡単に刈ってくれたので、床屋に行くのも現地の人々とのコミュニケーションの場になるかもしれないと思い、ジャフナでも行ってみることにしました。)では、チーム・メイトのスーザンが「じゃ、また後で」と先に帰ると、若い店員が「お母さんはまた戻ってくるの?」と訊いてきました。一瞬誰のことを言っているのかわからず、とまどったのですが、すぐにスーザンをわたしの母親だと思っていたことに気づきました。その上(どういう会話を交わしたのか、思い出せないのですが)わたしを男の子だと思っていたこともわかりました。スーザン(フィリピン人)とは実年齢がひとつしか違わず、彼女も決して体格は大きくないのですが、たしかどこかほかの場所でも、彼女をわたしの母親だと勘違いされました。

そしてそれとは別に、わたしを男の子だと思っていたケースは、そのほかもいくつかあります。わたしは(蚊避けのため)たいていズボンを履いていますが、それでも上着は女性用にしか見えないはずのブラウス類を多く着用します。Tシャツはほとんど着ません。なので、いくらなんでも男の子には見えないだろうと、じぶんでは思っていました。でもジャフナでは(おそらくマータラに比べて)、ズボン・ジーンズ類を着用する女性は少ないようですし、これは南部でも同じですが、スリランカ女性のおそらく95%くらいがロング・ヘアーです。なじみのない日本人(と彼らが認識しているのかどうかはわかりませんが)の顔立ちを見ただけでは、これが女性なのか男性なのかすぐにはわからず、髪形・服装(ズボン)で判断しているのかもしれません。マータラで「男の子?」と訊かれなかったのが不思議なくらいなのかも・・・といまは苦笑いです。

2.雨の日は休み

プロジェクト・ディレクターのウィリアムによると、これはどうもジャフナだけではないようですが・・・でも、マータラでは体験しなかったことです。(でも、マータラではもっと雨が頻繁に降るので、そうは言っていられないのかもしれません…?)雨がときおりかなり激しく降ると、人々は時間通りに職場にはいかなくてもよいというのが、どうやら「暗黙の了解」になっているようです。仕事を完全に休んでもよいのか、それとも遅くなるだけなのかはよくわかりませんが、NPのオフィスでのミーティングは、すぐにキャンセルされてしまいます。

もちろん舗装されていない道はどこも水浸しですが、これはマータラでもそれほど違いはありません。どうやら「雨」は言い訳の格好たる材料になっているようです。最初の2回くらいくらいは驚きましたが(日本でこんなことが理由になるはずありませんから…もちろん大雪のときにJRが止まるとかというのはありますが)、もう慣れました。そして「休み」「いない」というのは、雨の日に限らず、約束していてもしょっちゅうです。「コロンボに行った」という理由がかなり常用されています。たしかにそうかもしれないのですが、それならなぜ前回約束したときにそれがわからなかったのか、といつも思います。スケジュールをチェックするという習慣がない、スケジュールが直前までわからない、スケジュールなんて気にしない・・・きっと理由はいくつもあるのでしょうが、これがまかり通る社会(誰もそれをとがめない)、それが(ビジネス界の一部を除けば)スリランカのようです。

3.夜も眠れない理由

2週間前の水曜に床屋から帰る途中、スコールのような雨に見舞われました。それでも(日本人なので?)傘をさしながら歩いていると、道端に手のひらに入りそうなほど小さな子犬が土砂降りの雨に震えているのに出会いました。一度通り過ぎましたが、あまりにかわいそうで見過ごすことができませんでした。大きな水溜りの中を歩かなければ、子犬のところまで行けなかったのですが、すでに土砂降りの雨で足元はずぶぬれだったので、気にしてもしかたありません。

帰宅するとすぐにお湯を沸かして、犬を暖め、タオルで乾かしました。悪い夢でも見ているのかその夜一晩中彼女(犬)は、か細い声で鳴いて(うなって)いました。連れて来てから3〜4日ほどは歩くこともできないようで、どこか悪いのか心配しましたが、しばらくすると歩き出し、いまは走ることもできます。ただ床がすべるので、走ってはころんでいます。からだもかなり大きくなって、入れていたダンボール箱を飛び越えそうなくらいになりましたが、まだ固形物は食べられず、粉ミルクを飲んでいます。(スリランカでは人間も?!あまり液体のミルクを飲まないようで、店でもあまり見かけません。わたしも長いこと飲んでいません。)

彼女は、3時間おきにはトイレ(小)かミルク・タイムです。クン・クン、ヒー・ヒー鳴きだします。夜中でもかまいません。ここ2週間、わたしが寝不足の理由は、こういうわけです。いったん鳴きだすと、わたしはあきらめて、寝ぼけ眼で蚊帳から抜け出し、彼女を抱いてキッチンへ向かい、なべのミルクを温めます。彼女は温かいミルクしか飲みません。熱いとハフハフいいながらも飲んでいます。猫舌ということばはよく聞きますが、犬舌というのもあるのかもしれないと、たいへんな猫舌のわたしは今回認識しました!?

個人的には、わたしはオフィスでペットを飼うことに疑問を感じているので、彼女の引き取り手をいま捜しています。たぶん引き取ってくれるだろう人が現われたので、おそらく次回のSL便りまでには、彼女は去っているだろうと思います。スリランカには野良犬がとても多く、どこでも道には、犬・ヤギ・牛があふれています。彼女との偶然の出会いも、またスリランカでの「縁」のひとつでしょう。彼女の行く末がよいものであることを祈りつつ、しばしの交流を、寝不足になりながらも楽しんでいます。

それではみなさま、お元気で。

大島みどり

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