非暴力平和隊・日本

スリランカ通信(48)2005.02.23

スリランカ通信48号/仮設住宅建設の困難

2005年2月23日
大島みどり

この通信は私の個人的な感想や考えを述べたものであり、Nonviolent Peaceforceあるいは非暴力平和隊・日本の公式見解を示すものではありません。転載・転用をご希望の際は、筆者あてご連絡ください。

こんにちは。雨季には、夜中2枚のシーツをかけても寒かったジャフナですが、それがいつのまにか1枚になり、最近はそれもかけずに眠るほど、日増しに暑くなっています。まだ扇風機をかけずに眠れるのですが、それもいつまでのことやら。スリランカはこれから4〜5月にかけてがいちばん暑い季節です。

津波被災者の仮設住宅建設は、どこの地域でも、進み具合がかんばしくありません。各地域で多少の違いはありますが、建設遅れの主な理由は、下記のようなものだと思われます。

  • 土地不足(政府が所有する土地が少ない。もちろん政府が所有者と話し合って貸してもらう場合もあるが、なかなかまとまらないのか、どこでも土地不足を嘆いている。)
  • 政府が定めようとしている、海岸線からの新規建設不許可地帯(海岸線から何キロまでは新規に建物を建てられないという法律)が、はっきり決まらない。(情報と情報の流れに混乱が生じている)
  • 労働力不足(一部地域では、被災者に賃金を出して、労働力を補う工夫をしているが−これはたしかによいアイディアだと思う−、技術を要する仕事に携われる労働力(大工など)は限られていて、いまはスリランカ中でこうした労働力が請われており、需要と供給があわない。
  • 木材ほか、材料不足。これも上記と同じで、供給力が需要に追いつかない。

これらは深刻な問題で、ジャフナのポイント・ペドロ(PPD)でもまだ完成した仮設住宅キャンプはわたしが把握する限りひとつもありません。また、PPDでは仮設住宅キャンプに住むよりは、壊れた自宅の隣か近所の親戚の敷地内に、国際赤十字やUNHCRから支給されたテントを建てて、自分の家が修理できるまでそこに住もうと考える家族も多いようです。ただ、その壊れた自分の家の修理が可能なのか(建設不許可ゾーンに入っていたら?)、そしてたとえ可能であっても、その修理費用が政府等からいつ支給されるのかわからず、毎日を過ごしている人たちも多くいます。

PPDでは、政府からの食糧配給スタンプや台所用品購入費用、毎月の生活費の補償(決められた額)などは、ほぼ滞りなく行き渡っているようですし、彼らの生活手段である漁のためのボートや網は、国際NGOからの援助があるようですが、その数は限られ、とても一家族単位で所有できるものではありません。提供する側も、限られた予算で援助をしているわけなので、支給の順番待ちというのは、ある程度しかたのないことだと思います。でも、もちろん被災者にとっては、「あちらには支給されて、なんでじぶんには支給されないのか」ということになります。これはなにもボートや網に限ったことではなく、きょうはふたつの村(地域)で、自転車が配られていないという苦情を受けました。

昨日、被災後3度目に訪れたムラティブでは、仮設住宅建設が、ジャフナに比べて進んでいました。これはジャフナの政治的背景(権力・指令系統)が、ムラティブより複雑であることに起因します。政府とLTTEという二大勢力が存在するジャフナでは、LTTEの力が絶対的に強いムラティブより、すべての仕事に時間がかかると言っても過言ではありません。国際PPDスタッフに訊いてみても、だれもがムラティブのほうが活動しやすいと言います。これは、よいとか悪いとかの判断とはまったく別の、既成事実だと言えるでしょう。ただ、こうした理由で、被災者がとばっちりを受けることになるのであれば、それは悲しいことです。でも、こればかりは、残念ながらいますぐに解決できる問題ではありません。20数年積み重なった(内戦の)歴史が、そこにあります。

それでも、北部では南部で聞かれるような、「不正・汚職」というような話は聞きません。この場合の「不正・汚職」は、支給物資・資金を誰かがどこかで横取りするとか、公平に分配しないというようなことなのですが、それがどこまで事実なのか、津波被災後まだ南部をこの目で見ていないわたしとしては、確信が持てません。(できれば3月上旬に少しでも時間を作って、ゴール・マータラを訪ねたいと思っています。)それにしても、北部では誰かが不正をしているなどという話は、一度も聞いたことがありません。それはかなり救いだとわたしは感じています。もちろん言い換えれば、北部では、不正をするという以前に、不正もできないような政治的・社会的状況・問題があるとも言えます。どちらにせよ、北部には北部の、南部には南部の、(そして他の場所は他の場所の)問題があるということに間違いありません。スリランカという国・社会の複雑さ、多重性、問題の根深さは、停戦合意(2002年2月)後も、まったく変わっていません。

今月27日から3月4日まで、スリランカ・プロジェクトの全体ミーティング、そしてその後1週間休暇をとる予定なので、2週間ほどジャフナを離れます。メール送受信はおそらくほぼ不可能だと思われますので、どうぞご了承ください。それではみなさま、どうぞおからだにお気をつけて、春の到来をお待ちください。

大島みどり

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