非暴力平和隊・日本

スリランカ通信(52)2005.05.02

スリランカ通信52号/マンゴーの季節(猛暑と洪水)

2005年5月2日
大島みどり

この通信は私の個人的な感想や考えを述べたものであり、Nonviolent Peaceforceあるいは非暴力平和隊・日本の公式見解を示すものではありません。転載・転用をご希望の際は、筆者あてご連絡ください。

マンゴーの季節がやって来ました。家の前庭(小さなスペース)には大家さんのマンゴーの木が植わっていて、ちょうど2階のわたしの家のベランダの高さ前後にマンゴーがたくさんなっています。が、ほうきの長い柄を使って届く範囲は限られていて、マンゴーがボタボタ落ちていくのを防げません。「棚からボタモチ」ならぬ、「木からマンゴー」です。(ぜんぜん意味が違いますが。)

とにかく落ちても落ちても、5月中旬くらいまでは、なくなりません。木の下には3階に住む家族の車置き場があり、屋根はトタンでできています。つまり、マンゴーが落ちるたびにトタン屋根が大きな音をたてるので、「ああ落ちてる」とわかるのです。静かな夜は、よけいに音が鳴り響きます。

ところで、シンハラ語では親友のことを「アンバ・ヤールワ」(微妙にカタカナでは表せないのですが)つまり「マンゴー・フレンド」というそうです。なぜマンゴーなのかどうもわかりませんが、マンゴーを一緒に食べれば親友!?日本で言う「同じ釜の飯を喰う」というようなものなのでしょうか?(これもまた大ボケ?!)今度誰かに訊いてみます。それでもとにかく、わたしにもマンゴー・フレンドと呼ばせてもらえる友人がいるのは、とてもうれしいことです。

さて、マータラ周辺の現在の状況について、少しお話しましょう。

去年の9月にわたしが移動した時点では、その存在がおそらくほぼ0%だった国際NGO(INGO)が、いまではマータラに、たぶん20以上も軒を連ねています。もちろんそうしたINGOも、現地人スタッフが大半を占めているので、外国人の姿は、それでもまだ少数です。またINGOではなくても、スリランカの大手の(北東部で見かけるような)NGOも、津波後活動を開始しています。こうした団体は、津波被災後の仮設住宅作りから、再就労に必要な機械・工具・ボート・網などの修復と支給、生活に必要な水・衛生管理・トイレ建設、学校設備の支援、奨学金制度、ローンの貸付にいたるまで、あらゆる種類の援助を行っています。

ところで、実はこの便りを書き始めたのは、先週だったのですが、昨日まではおそらくスリランカでも『猛暑』と呼べるほどの暑さが続いていました。たぶん地球温暖化・異常気象の影響だと思うのですが、スリランカ人も「夜眠れない」と嘆くほどの猛暑で、各地で暑さのために倒れる人も出ているようです。

ところが、きょうマータラでは、お昼過ぎからおそらく数週間ぶりに雨が降りました。安堵の息をつきながらも、そうでなくても舗装されていない家の前のデコボコ道が、(いつ終わるのか見当もつかない)補修作業で、どこもかしこも泥水のプールと化し、店に入ろうにも、どこから泥のプールを渡ろうかしばし考えるありさまです。

異常気象の影響がなければ5月中旬くらいまでには、雨季に入るはずの南部では、つまり雨季に入ると、こうした大雨→水はけが悪い→洪水、という状況ができやすいのです。そこでいちばんの心配が、テント生活を強いられている人々のさらなる水害です。一刻でも早く、木やせめてトタン屋根で囲われた仮設住宅へ、彼らを移動させなくてはなりません。もちろん、彼らの最終的な住宅建設ができるに越したことはありませんが、やはりここでもいちばんの問題は、仮設住宅あるいは再定住のための土地の確保です。コロンボからゴール・マータラへたどるゴール・ロード沿いを走ると、テントが海岸線から100メートルの範囲内に数多く建設されています。ジャフナのポイント・ペドロほどの距離(おそらく50mくらいの幅)ではないにしろ、人々はこれまで海岸線から100mの範囲で生活をしてきたことがよくわかります。彼らに提供できる政府の土地が少ないという事実に増して、この100m以上海岸線から離れた場所にしか建設が許可されないという状況は、被災者たちの再定住を遅らせるに十分以上の効力があります。科学的根拠はわかりませんが、95mならダメで100mならOKという保証は、誰にもできないはずです。日中は誰もテントの中には居られないほどの、雨季前のいちばん暑いこの季節、そして雨がひとたび降れ出せば、人々が身を寄せる場もなくなるほどの雨季を控えて、『100m以内建設禁止』の看板は人々にとっては、用意に受け入れ難しという状況です。

規則や法律は、人々を助けるためのものであって、規則や法律自体が独り歩きをする状況を作ってはならないはずですが、多くの現実は逆方向にあるというのが、(スリランカに限らず)世の常かもしれません。だからこそ、世界を変えるのは、政治ではなく、人々の力(Civil Society, Civil Power)だと思います。そしてもちろん、日本を変えるのは、日本の政治(家)ではなく、日本の一般市民の力です。わたしたち自身です。

話が大分一般論になってしまいましたが、そんなマータラで、わたしは現在ひとりで活動しています。「何をしているか?」う〜ん、以前と変わらず、かなり答えに戸惑う質問です。実は今週中旬、コロンボからプロジェクト・ディレクターと、ドイツからプログラム・オフィサーがやってきます。そしてマータラ事務所の行く末(!?)について、おそらく結論を出すことになるはずです。借りている家のリースが6月初めに切れるので、更新か終了かの決断を迫られています。次回の便りでは、「マータラ事務所の運命やいかに?!」というタイトルのもと、「何をしているか?」という難問に答える努力をしてみたいと思います。

『猛暑』か『洪水』かの選択をしなくてすむ場所に、スリランカ丸ごと移動したいと思うきょうこのごろです。

あ〜、日本はゴールデン・ウィークですね。
すてきなお休みをお送りください。

大島みどり

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