非暴力平和隊・日本

スリランカ通信(65)2005.11.17

スリランカ通信65号/ドイツから大統領選挙のスリランカへ

2005年11月17日
大島みどり

この通信は私の個人的な感想や考えを述べたものであり、Nonviolent Peaceforceあるいは非暴力平和隊・日本の公式見解を示すものではありません。転載・転用をご希望の際は、筆者あてご連絡ください。

こんにちは。大統領選挙日のスリランカからお便りします。日曜の朝にドイツを出発、翌朝成田着、そして成田近辺で一泊した後、火曜朝飛行機を乗り継ぎ、昨日(水曜)まだ明け方には程遠い時間にコロンボに到着しました。時差には比較的強いほうだと勝手に自負しているものの、さすがに2日(というか時差があるので、実際何日・何時間なのかわかりませんが)で、8時間の早送り(ドイツ→日本)と、3時間の後戻り(日本→スリランカ)、しかも昼を追い続けてきたような旅は疲れました。

でも、こんな「ドイツまで呼ばれ、そこでわたしの2年間の体験を話させてもらう」というような貴重な機会(贅沢)をいただいた身としては、「疲れた」などということばは、申し訳なくて、口には出せません。

よっぽど貧乏性にできているのかとじぶんで思うほど、今回は、「贅沢」ということについて考えてしまいました。これはドイツの人々が贅沢な生活をしているということでは決してないのですが(人々の生活は概して「質素」だと思います)、公共のバス・列車に乗っても、クリスマスのイルミネーションとデコレーションに飾られた店を覗いても、SLから来たわたしには、どこもかしこも「贅沢」に見えてくるのです。もちろんSLにだって、コロンボには、贅沢なホテルや店、レストランなどはいくつもあります。(わたしがあまりそういうところへ行かないだけで。)そしてドイツの街角にも、物乞いをしている人を見かけます。だから、社会構造としては、おそらく基本的には同じようなものなのかもしれません。でも、どう見ても違うのです。何が違うのだろう?どこが違うのだろう?何が違いを作るのだろう?…そんなことを、ずっと考えていました。

ドイツでは5回の講演会(と呼ぶほどの大きなものではないのですが、ほかに呼び方がわからないのでそう書きます)を、中北西部の5都市で行いました。なにせ人前で話すのが苦手のわたしですから、聴衆は多くなくてもいっこうにかまわないのですが、コーディネートしてくれた人たちにとっては、人が多く集まるほどうれしいのは当たり前で、あまり集らなかったときなどは、肩を落とす様子に、気の毒になりました。でも、集ってくれた人々は、とても熱心に、また興味深そうに話を聴いてくださり、いつも時間ぎりぎりまで質問が続きました。NPの活動のことはもとより、SLの一般的情報、そして最後には日本社会の現状(問題)にまで質問がおよび、「日本は歴史的に『お上』の力が強く、市民社会の力が弱いから・・・」と頭をかきながら答えなくてはならない一幕もありました。「日本が抱える問題もたくさんある」というと、「それはドイツも同じ。どこもそうだ」と言われました。折りしも、フランスでは移民・難民問題に根付く大きな暴動が起こっている最中、陸続きのヨーロッパでは、「それはよその国の問題」と知らん振りする余裕(無頓着さ)などない、事の重大さと責任の重さを認識する姿勢と真剣さが読み取れました。ドイツ・ツアーについてのもう少し詳しい内容については、また別の機会(SL便りではないかもしれませんが)にでも、書かせていただこうと思います。

いまわたしは静まり返ったNPのコロンボ・オフィスで便りを書いています。大統領選挙の終盤(夕方)あたりに、万が一戒厳令が出たり、混乱が起きたりするのを避けて、NPの現地スタッフは、半日休暇をとるなどして、すでにオフィスを去ってしまいました。さきほど頭上すれすれの高さで、ヘリコプターが2機、ものすごい爆音と共に飛び去って行くのを見て、思わず鳥肌が立ちました。今朝は、ジャフナでLTTEが(主宰して)投票所へ向かう人たちを阻止するための大きなデモを行うかもしれないという情報が入りました。あくまで「かもしれない」という話なので、実際いまどのような状況になっているのかはわかりませんが、LTTE/市民と政府軍の小競り合いや(最悪の場合)銃撃戦が起こらないことを、心から祈っています。

選挙結果については、おそらくみなさまのお手元にも、あるいはわたしより早く情報が届くかもしれません。が、選挙にまつわる状況・事態の変化などがありましたら、わたしからもなるべく早くご報告させていただきます。どうぞみなさま、きょうのこの選挙が何事も無く、平穏無事に終わることを、そしてSLの将来が少しでも明るくなることをわたしとともに祈ってください。

寒さに震えたドイツから、(雨季だからそれでもまだましな)汗にじむスリランカへの移動を終えて。

大島みどり

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