非暴力平和隊・日本

非暴力平和隊の行動規範(Code of Conduct)
(2003年6月)(日本語訳)

はじめに

非暴力平和隊(NP)は、非暴力介入の為に訓練された国際的な市民を紛争地域に派遣することにより、平和と正義に貢献しようとする国際的なNGOである。平和隊は殺戮と破壊を防ぎ人権を擁護する為に紛争地域に派遣され、地域のグループが非暴力により闘争し、対話を始め、平和的解決を求める為の雰囲気を作り出す。

その活動のために、非暴力平和隊はここに下記に述べる原則とガイドラインを規定した。

この行動規範は暫定的な性格の実践的(working)文書である。非暴力平和隊は現場で実際に活動を始める際には、この行動規範を再評価し部分的に更新する必要が生ずるであろうことを認識している。従ってこの行動規範は定期的に見直されるであろうし、非暴力平和隊内部の人も第三者もこの行動規範に対するコメントや批判をお寄せいただきたい。

セント・ポール 2003年5月

△非暴力平和隊の行動規範(Code of Conduct)(2003年6月)(日本語訳)/TOPへもどる

A.非暴力平和隊の原則

紛争の当事者が優先されること

非暴力平和隊は、紛争の解決或は転換はそれに直接関わっている人達によってのみ可能であると信じる。国際的仲介者としての非暴力平和隊の役割は、紛争の当事者達がそうすることを支援することである。

非暴力

非暴力平和隊は非暴力にコミットしている。即ち、肉体的、精神的な害を与え、心を傷つけ或は人命を失うような結果をもたらす行動には決して積極的に関与しないし支持もしないということである。非暴力平和隊の非暴力への忠誠は無条件である。なぜならばNPは、国家間、或は国内の紛争転換は暴力的手段では達成することは出来ない、と確信しているからである。

政治的立場を取らないこと

非暴力平和隊は政治的立場を取ることはしない。非暴力平和隊は如何なる政治団体にも組しないが、非暴力、非武装で平和的解決にコミットするならば、如何なるの市民グループにも、要請により、援護サービスを提供するように努める。その際、非暴力平和隊は暴力の使用に反対し正義と持続的な平和が求められている限りすべての者の安全の為に奉仕する。

非暴力平和隊は、紛争中のいずれの側の政治的な要求や見解に関する立場を取ること、組することをしない。非暴力平和隊は国際的な人道、人権に関する法律の原則や価値に関しては中立ではなく、如何なる場合でもそれらを支持する努力を行う。

独立性

非暴力平和隊は独立した組織であり、如何なる利益グループ、政党、イデオロギーや宗教からも独立しており、非暴力平和隊の意思決定プロセス、目標そして原則に沿って自由に政策や運営上の戦略を策定するものである。

人権と国際法

異なる価値観によって人権の普遍的な概念が問われていることを認識する一方、非暴力平和隊は世界人権宣言並びにその他の人権に関する協定や取決めは現代の世界の人々がこれまで見出した最も包摂的な共通の指針であると考える。

非暴力平和隊は使命遂行において人権を推進するという原則と実践にコミットする。非暴力平和隊は国際的な人道法や原則の遵守ならびにすべての人々の人間として、そして、国民としての権利の尊重を探求し推進する。

△非暴力平和隊の行動規範(Code of Conduct)(2003年6月)(日本語訳)/TOPへもどる

B.非暴力平和隊の責務、説明責任、関係構築

すべての人に対して

非暴力平和隊はすべての人の安全を求めて、まず、非暴力平和隊が介入する紛争地域に生活するすべての人々に対して責任を持つ。又、非暴力平和隊は支持者とメンバー、スポンサー、資金提供者そして文字通り国際社会に責任を持つ。

パートナー

非暴力平和隊の目的は幅広い基盤を持った国際的な市民組織となることであり、可能な時はいつでも地域のグループとパートナーを組んで活動する。

紛争当事者のみが最終的に紛争を解決できるとの信念に基づき、非暴力平和隊は疑念のあるときは他の国際的な調停者に先立って、地域のNGOや他の地域の活動家達のガイダンスを行うようにする。

非暴力平和隊は他のNGOや正義と紛争転換の為に活動している政府機関との協同を求めていく。非暴力平和隊は他の組織が既に取り組んでいる重複する分野での活動はしない。

非暴力平和隊はそのパートナーや平和と正義にコミットしている他のNGOと敵対関係や競合を生み出すような活動は避け、彼らと資金集めやその他の資源のために意図的にそして直接的に競合することはしない。

職員とボランティア

グルーバルに支持者(団体)を有する組織として、非暴力平和隊は雇用の諸手続きにおいて差別的な慣行を排除することはもとより(雇用機会均等方針)、異なる地域、民族、国籍、信仰の人々や女性を含め、可能な限りの多様化をはかることにより非暴力平和隊の原則に基づいた実践を求める。

非暴力平和隊で働くことは時としてかなりのリスクを伴い、そして非暴力平和隊に働く人々もこうしたリスクを進んで受け入れてくれるものと考えるが、非暴力平和隊はその職員とボランティアの安全を確保する為に最善を尽くす。

緊急事態に際しては、非暴力平和隊は外国人職員と地域の職員を差別したり不公平な取り扱いはしない。

対政府関係

非暴力平和隊は活動している国の法律を遵守するが、抵抗の手段として市民不服従を用いているグループをパートナーとして受け入れることを排除しない。

非暴力平和隊は政府或は他のスポンサーの対外、対内政策の手先として行動することはない。

秘密保持と透明性

説明責任を強化する手段として、非暴力平和隊はその活動を通して透明性を持つべく努力する。しかし、人々の安全や活動の有効性のために必要な時には、非暴力平和隊は常にパートナーや、一緒に働いている他の組織に対する守秘を尊重する。

介入と撤退の基準

非暴力平和隊は、地域の組織や平和的な変化/解決の為に働いている非暴力運動の招聘により派遣される。紛争にかかわるすべての当事者からの承認を取り付けるべく努力が行われる。

非暴力平和隊は次の場合にのみプロジェクトとして取り上げ、或はチームを派遣する。

  • 具体的な提案がありパートナーがいる場合
  • その提案が非暴力平和隊の任務とノウハウに合致している
  • 提案が非暴力平和隊の非暴力で政治的立場を取らないスタンスを維持することが出来る
  • 非暴力平和隊の現場スタッフのリスクのレベルが許容できる
  • 充分な組織的且つ兵站的な支援があり、そしてプロジェクトの期間中、組織が充分な資金とコミットメントがあると推定する理由があり、且つ、
  • 非暴力平和隊の存在が、平和的紛争転換や正義にむけての地域の努力を強化すると推定する事前の充分なアセスメントがある
  • 非暴力平和隊が既に現地にいる他の組織の活動と重複しない

非暴力平和隊は次の場合にのみプロジェクトを終結する。

  • プロジェクトの目的が達せられた場合
  • あるいは非暴力平和隊を招聘したところが招聘を取り下げた場合
  • あるいは滞在を続けることで非暴力平和隊がその国で一緒に働いている人々を危険にさらすことになる場合
  • あるいは非暴力平和隊自身のスタッフの安全が保障できないほどに危険にさらされる場合

組織内倫理

グローバルに支持者(団体)を有する組織として、非暴力平和隊はそれぞれ異なる支持者・団体――メンバー団体、国際理事会、ボランティアや職員――内で、次のような運営上の(共通の)原則を規定した:

  • 平和隊に参加している期間は積極的に非暴力に貢献する
  • 指揮系統に組み込まれた民主的意思決定をする
  • 平和隊の発展、展開、人事や統治すべての分野に組み込まれた多文化的視野をもつ
  • 非暴力と紛争の平和的解決に専念し、非暴力と慈愛・寛容の価値観を持って生きることに献身している男女によって導かれる指導の遵守

非暴力平和隊は自分自身を学習中の組織と考える。たゆまぬ反省と評価のプロセスを通して、非暴力平和隊は活動と組織の改善を図りすべての職員の技能の向上を図る。非暴力平和隊は他の組織が益するよう自ら学んだ教訓を公表することを約束する。

非暴力平和隊は内部問題についても、大規模な紛争解決で望むような同様のメカニズム、即ち交渉と合意を通して解決するように努める。

ボランティアであれ職員であれ誰でも非暴力平和隊によって設置される苦情処理制度が利用できる。

性別

非暴力平和隊は紛争転換や人権擁護に際し性別が重要であると認識している。そこで非暴力平和隊は選ばれた代表者やすべてのレベルの要員の半分が女性であるように努める。

そのことはプロジェクトの開発のあらゆる段階において、性別分析や性別に関連した訓練を含み、現場の仕事において‘性別の次元’が正当に配慮されているかについて確認する。後者に関しては、女性や女性のグループが地域のパートナーであるかについて確認するとか、地域の男女の特別のニーズへの配慮とか、紛争転換において女性が果すべき特別な役割を認識するとかいうことである。

資金調達に関する倫理

非暴力平和隊はそれが関与しているか現在関与を考慮中の紛争の当事者に確実にそして即座に加速的な影響を与えるような外交力を持つ如何なる政府からの資金提供も受けない。

非暴力平和隊はそれが関与しているか関与を検討中の紛争に関係している政府や組織からの資金提供は受けない。

非暴力平和隊は武器から利益を得ている如何なる企業からの資金提供は受けない。

非暴力平和隊は不正に得られたものと判明している資金は受けない。

非暴力平和隊は資金調達先を多様化することにより独立性を維持すべく努める。

非暴力平和隊の目標は、年間予算の10%以上を一つの資金源に頼らないということである。この目標を守るのは、必ずしも容易ではないが、しかしながら、国連安全保障理事会の常任理事国の政府からの資金提供については特別に注意が払われなければならない。

非暴力平和隊はその支持者や資金提供者に対し定期的で信頼できる報告を通じて義務と説明責任を認識している。しかしながら、非暴力平和隊の最優先の責務は人命の救助であり、非暴力平和隊は非常な敏感さと政治的立場を取らないことが必要とされる地域で独立して活動しなければならないので、非暴力平和隊は資金提供者が、提供されたお金は非暴力平和隊の非暴力介入についての決定に影響を与えるものでない、ことを理解することを望んでいる。

△非暴力平和隊の行動規範(Code of Conduct)(2003年6月)(日本語訳)/TOPへもどる

C.非暴力平和隊のフィールドスタッフに対する
派遣先での活動の倫理

個人の行動の倫理基準

チームメンバーは勤務中であろうとなかろうと常に道徳的に最高のレベルでの行動が求められる。

  • 彼らは全ての人々と地域の慣習に対し敬意を表する。
  • 彼らは地域の生活に弊害をもたらし或は紛争の種を播くようなことや(例えば社会のあるメンバーに特権を与えるなど)、違法とされている関係を結ぶことや、文化をないがしろにするような如何なる行動も示すことがないように心掛ける。
  • 非暴力平和隊はチームの一員であろうが地域住民であろうが、他人に彼らの見解や宗教或はその他の信条を強要するようなことは決してしない。これは他の宗教や宗教的集会のメンバーを、非暴力平和隊のメンバーによって企画された礼拝に誘うことも含む。
  • もし彼らの考えと異なる考えや意見に当面した際には、非暴力平和隊のチームメンバーは彼らのパートナーに耳を傾け理解するよう努力する。彼らは、そうしたパートナーを彼らの考えや原則に回心させるようなことはしない。
  • 彼らは、彼らが問題を解決する為にいるのではなく、地域の人が問題解決できるようにするためにいるのだということを認識する。彼らは“何かをしよう”という欲求にたいしよく注意を払う。
  • 彼らは、常に彼らが相手となっている人々の安全を第一に置く――業務の遂行中であろうが私的な事柄においても――、そして、彼らのパートナーの幸福と健康を危険にさらすようなことになる如何なる行動も避ける。
  • チーム内外を問わず、如何なる性的嫌がらせや人種差別的行動に関する告発があった場合は、即座に停職となり、告発された者に公平な弁護の機会を与え、プロジェクトの責任者或はその代理者が慎重な究明を行い、その結果、予告無しに契約の解除がなされることがある。
  • 非暴力平和隊メンバーは簡素な御礼の範囲を超えた謝礼を受けない。
  • 彼らは品物の闇市場取引を含む如何なる不法な活動に関与しない。

害することを行わない

非暴力平和隊並びに個々のチームメンバーは、国によっては外国人には異なる価格があることを認識しつつ、不当に高い家賃や品物の対価を与えてその地域の市場や価格体系を歪めるようなことはしない。

チームメンバーは、主として与えられた現地手当で生活し、派遣された国で給与を使用しない原則である。

チームメンバーは、紛争を解決する手段として暴力の容認を示唆するような暗黙の倫理的メッセージを避ける。

チームメンバーは、彼らの行動(或は、行動しないこと)が地域社会に或は紛争にネガテイヴな影響を与えないかどうか絶えず注意深く分析し、そのようなことが判明した場合は直ちにそうした行動(或は行動しないこと)をやめるように務める。

任務への忠誠

チームメンバーは、遂行中のプロジェクトの任務として明確に記載されていない人道的援助やその他の活動に従事しない。任務以外の如何なる追加業務もプロジェクト責任者或はその代理による事前の同意が必要である。

もし緊急な人道的必要性に遭遇した場合、チームは人道支援組織がそのことを知らされていることを確認したうえで問題処理に当たる。

プロジェクトの任務が他の規定を持っている場合以外は、チームメンバーは非暴力平和隊が保護しようとしているグループや個人の仕事を支援してはならないし、他の地域NGO或は国際的NGOについても同様である。

プロジェクトの任務が他の規定を持っている場合以外は、チームメンバーは彼らに地域住民から直接寄せられた要請を地域か或は国際的NGOに紹介する。非暴力平和隊は、生命に直結する脅威或はその他の深刻な人権侵害の場合、或は問題を処理する地域のNGOがない場合に限り、独自に行動する。(非暴力平和隊メンバーが救急手当ての資格を持っている場合にそのような事態に対応するとか)

政治的立場を取らない原則に基づき、チームメンバーは地域或は国際的NGOの如何なる抗議活動、または違法であろうがなかろうが、如何なる市民不服従運動に参加することはない。彼らは、要請があれば、そのような活動を監視することはあるがそれに加わることはない。

彼らの報告書では、チームメンバーは出来るだけ客観的に紛争にかかわるすべての関係者の見解を表示するよう努力し、判断を下すようなコメントは差し控える。

チームメンバーはプロジェクト責任者或はその代理者の許可なしに新聞やメディアに発表しないし、地域或は国際的聴衆に対し公式報告を書くことはしない。

基本的な活動契約・規則

非暴力平和隊チームメンバーはプロジェクト責任者やその代理人の権限を尊重し彼らに対し適切な責務の遂行と行動規範の遵守の責任を持つ。

チームメンバーは心身ともに自分自身への注意を怠らない。彼らは過労にならないよう努力し、ストレスの要因やトラウマの経験が生ずる際は、それらを認識し、対処するよう努める。彼らは自分たちの限界を知って、お互いの限界を尊重し、お互いに助け合う。

チームメンバーは、プロジェクト責任者或はその代理者の事前の承認なしには、非暴力平和隊に従事している間は他の誰の為にも余分な仕事を引き受けることは許されない。これは報道やその他の活動を含む。

他の組織から派遣されたチームメンバーは彼らの第一の責務が非暴力平和隊にあることを明確に理解して非暴力平和隊の任務に就く。派遣元の組織に対する如何なる約束(例えば休暇中の参加、特別報告業務等)もプロジェクト責任者或はその代理者の事前の承認が必要である。

チームメンバーは非暴力平和隊との契約が終了した後すぐに、派遣された国で他の組織の仕事には就かないことに同意する必要がある。プロジェクト責任者と別の取り決めがなければ、非暴力平和隊の仕事の終了と当該国での他のNGOの仕事に就くまで少なくとも3ヶ月の期間が必要である。

チームメンバーは非暴力平和隊の任務の期間中は非暴力平和隊に対する彼らの責務や義務と矛盾するような行動、表明や発表をしてはならない。もし、プロジェクト責任者或はその代理者がチームの撤退を命じた時、それに従わない場合、自動的に即座の契約解除となり、そのメンバーに対する非暴力平和隊の責任はそこで終了する。

非暴力平和隊と交わされた契約の如何なる重大な違反も契約の即時終了になることがある。

以上

注記:
これは、2003年6月、非暴力平和隊国際事務局により発行された“Code of Conduct”の翻訳である。遵守しなければならないのは正文である原文(英文)であり、この訳文ではない。(訳者注)

△非暴力平和隊の行動規範(Code of Conduct)(2003年6月)(日本語訳)/TOPへもどる