非暴力平和隊・日本

2月28日

非暴力による平和構築の最前線で
―非暴力平和隊ティム事務局長を迎えて―

世界中に広がる暴力の袋小路を脱する方途を求めて、武器をもたない市民が紛争地に入り、非暴力による平和活動を続けています。ベルギーのブラッセルに本部事務局を置く非暴力平和隊(Nonviolent Peaceforce、NP)もその一つで、2003年以来スリランカ、フィリピンなどで活動を続けています。  NPの創設者の一人で、平和活動家として世界的に知られるティム・ウォリス事務局長の来日を機に、下記の通り講演会を開催いたします。
「非暴力」の理想が、現実にどのように直面しているかについて、つぶさに語っていただきます。

【講演内容要旨メモ】

初めは音楽の先生になりたかった。環境保護運動、反原発運動をするなかで直接行動にも参加した。1980年代ピースキャンプに参加し核兵器廃絶運動にも関与した。その後大学院に入り、なぜ平和運動、反核運動が成功しなかったのか、あるいはしたのか、その成功と失敗を研究し、どうしたら影響力を及ぼせるかを研究した。85年にPBIグァテマラに短期間参加した。反対するだけでなく違いを作り出せる建設的なところに関心をもった。PBI/UKに参加し、バルカン・ピースチームにも参加した。

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NPの魅力
世界中で暴力を減らす活動が行なわれている。世界で軍隊は、英国は例外だが、人道的支援のみになってきている。人道支援として軍隊は必要と思われているが、実際はいらない。
17カ国で国連PKOが実施され10万人の兵士が派遣されているが、平和を維持しているのは、銃や戦車ではなく、UNの国際的なプレゼンスということ。
国連本部で将来のPKOのあり方を議論した。10万人もの兵士を派遣していて90億ドルかかっている。そして例えばコンゴでスキャンダルがあり、チャドでは効果出せず追い出されている。PKOは危機的状態にあり、この規模・レベルの活動をするのは困難になっている。
いま、国連はNPに関心を持っている。つまり市民による非武装の活動にである。もちろん10万人の兵士の活動をすべて市民が代わってできるわけではないが。
NPは暴力的紛争の扱い方を変えていく。非武装市民もできるということ、人道支援にも軍隊はいらないということを証明していく。
憲法九条をもつ日本もこうした活動に関心あると思う。
ガルトゥングはピースキーピング、ピースメイキング、ピースビルディングという概念をつくり、ABCトライアングルという紛争の起こり方を分析した。
ピースメイキングはアティテュード(A)、態度、考え方を変えていく。会って話して対話して理解して憎しみを取り除く、解決していくこと。
ピースキーピングはビヘイビア(B)、ぶったり殺したりという行動、暴力を止める、
ピースビルディングは暴力が起きる背景、コンテキスト(C)、根本的原因を取り除くこと。
市民によるピースキーピングは、解決の段階に進めるために、殺し合いを止める事。

50人、100人規模で始め、軍に頼らない介入、軍隊のない世界を目指す。そのための小さな役割をNPは果たす。ごく限られた特定の分野のことに取り組んでいる。現在デモンストレートしてみせ、政府、国連、メディア、市民に可能だということ、軍隊は必要でないということを示したい。
具体的に何をしているか。NPはピースキーピングの分野に焦点を当てている。国連や世界は、軍隊はピースメイキング、ピースビルディングはできないと知っている。ピースキーピングはできると思っているが、国連10万人の兵士はピースキーピングで派遣され何をしているか。実はなにもしていない。メル・ダンカン前NP事務局長の息子が国連PKOでコソボに7カ月派遣されたが、滞在中コソボ人には一人にも会わなかったと言っていた。ずっと兵舎の中にいた。地域とのコミュニケーションはなかった。ただいるだけ。つまり軍事力で平和を維持しているのではなく、背後にある国際社会の力で平和を維持している。PBIもNPもそう。国際的なプレゼンス。非武装の市民がピースキーピングを出来ることを、NPは証明しようと、それに特化している
やはり非暴力介入のNGOウイットネス・フォー・ピースは、ニカラグアにいるときにコントラから攻撃を受けなかったことを証明した。パレスチナでも外国人がいると兵士は態度を変え人権侵害をやめる。
国際的な、目に見えるプレゼンスが状況を変える。
敵対するもの同士がコミュニケートするニュートラル、中立的なスペースをつくる。
問題を解決できるのは現地の人だけ。NPは人々を直接守り、対話するスペースを提供する。
国連はRobust((力)強い、頑強な、強固な)なピースキーピングを求めている。「悪い」やつをやっつける。暴力や殺戮を止め、人を守る、ということ。ルワンダではジェノサイドを止める事ができなかった。ボスニアでは6千人の殺戮を止められなかった。国連は、軍隊は人道支援ができてない、人命を守れてないと考えている。ただそこにいるだけでなく、もっと効率的で強くなることを求めている。
リアン・マホニが「プロアクティブ・プレゼンス」という本を書いた。紛争が起きると頭の中で何が起きるか、指令系統はどうなっているか、科学的に分析している。それはシンプルでもある。暴力は非合理的で理不尽で戦略的でない……と考えられているがそうではない、と本の中で書かれている。暴力に至るまで人な何に影響を受けるか。それがわかればそこに影響を与えればいい。たとえば指令系統の各レベルにとか。
たとえば、チェックポイントの各兵士は上司の思考に影響を受けている。上司はさらに上の指導者の影響を受け、そのトップは政府であったり、お金であったり、貿易、国際世論、関係国であったりする。どこに影響与えたら止めることができるか。より効果的にするために分析する必要がある。
たとえば、スリランカのバブニアで去年パートナー団体に殺害の脅迫がきた。それはある政治団体からでトリンコマリーの政治家が関わっていることがわかった。パートナーとその政治家に会いに行った。政治家は関与を否定したが、その後脅迫はなくなった。
またジャフナから逃げてきたNGOスタッフがコロンボで反テロリスト法によって逮捕され3ヶ月拘束された。ジャフナの政治家が背後にいることがわかり交渉し解放された。
誰が責任あるのか、影響力があるのか、の例である。

NPで重要なのはノンバイオレンス――武器を持たない、殺さない、撃たない、暴力でなく非暴力で解決し暴力をなくそうとしていること。暴力が「解決」することも認めるが、非暴力の方が効率的。
NPの非暴力は非暴力を示す、誇示するためのアクションでもないし、ガンジーがやったことをそのままするわけでもない。当時インドを植民地化していた英国を追い出したり、戦車の前に座り込んだりと違う。
もうひとつ重要なのはノンパルチザン(政治的立場をとらない)。ノンパルチザンな非暴力 ということ。NPはキャンペーン団体ではない。人といる事が目的。
よその国のことをすべて理解することはできない。その国の人がその国の問題を解決する。
また現実的要請として、その国の政府との関係もある。効果的にするにはすべての当事者信頼されなければならない。現地NGOはノンパルチザンでないし、できないし、そのようなことは考えない。NPは軍隊、警察、地元民、デモ主催者等といい関係をもつ。

根源的な理由――真実が犠牲になる。
混乱すると人は立場をとらないといけなくなる――白か黒か。
悪いところが拡大され、大袈裟になり、真実から離れていく。ものごとは白黒はっきりしない、シンプルにわけることはできない。
警察のなかにもいい仕事しようという人はいる。そういう人がその仕事をできるようにする。30万人の国内避難民いたが、政府や軍隊のなかにも難民を助けたいと真剣に思っている人はいる。
サクセスストーリーをつくること。児童兵士防止をユニセフやローカル、政府と協働し可能だと示す事。

ミンダナオではムスリム対キリスト教、2グループが対立している。
スリランカよりも外国人は危険。スリランカでは外国人の、直接的、犠牲者はいない。ミンダナオはある。

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Q.丸腰だとソフトターゲットにならないか。
メンバーのジャリールは(ミンダナオで)3ヶ月間誘拐された。パーフェクトな解決法・対処法はない。しかし情報分析は重要。暴力は突然は起きない。殺そうとする人はそれがいい方法だと思っているが、それがいい方法ではないとわからせる。

Q.ジャリールはムスリムなのになぜ狙われたか。
殺す目的は国際世論、(武器買う)お金、自分の要求を受け止めて欲しいというメッセージだったりする。好んで殺すのはいない。誰でも良く思われたいと思っている。

Q.勢力のバランスのあるところだから有効なのでは。
バランスのないところでもやってきた。政府に影響与えやすい。政府は悪者にはなりたくない。

Q.勢力のバランスのあるところだから有効なのでは。
バランスのないところでもやってきた。政府に影響与えやすい。政府は悪者にはなりたくない。

NPの目標
ビルマ、パレスチナにも入っていける力をつけたい。
他のNGOが入れないところでも入れるNGOになりたい。政府を転覆するのが目的ではない。時間のかかる、スローなプロセスだ。

(文責:事務局)

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