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「非武装市民平和活動の承認を求む」アメリカ議会における議会証言
2015年3月15日
メル・ダンカン(非暴力平和隊 共同創設者)
我が国が更なる永続的な戦争状態への段階に進むかどうかの検討の中で私の考えと経験を共有する場を提供してくださったことに感謝します。
長期的なアプローチを話し合おうとしていること念頭においてください。短期的な解決策はありません。それ故に、私どもが提案する行動が紛争や長期間の戦争のための軍事化の強化に向かうものであるか、或いは、我々の行動が正義を伴った長期的平和へと導く平和的イニシアテブを支援するものであるかどうか、を判断して頂きたい。
私が皆さまに強く支援を求める一つのアプローチは非武装市民平和活動(UCP)であります。
過去12年間、私は非暴力平和隊を通して世界中の紛争地域に対して非武装市民平和活動家(UCP)を訓練し派遣する活動に従事してきました。非武装市民平和活動家(UCP)は当該地域の市民社会の招聘によってのみ派遣されます。彼らは市民を適切に保護し暴力を阻止するために非暴力的手法を用います。彼らは世界25カ国から参加しています。我々の現在の最大のプロジェクトは南スーダンで、150名の要因が11の拠点で活動しています。EUの支援を得て6月からシリアで市民保護活動プロジェクトを開始します。
非武装市民平和活動(UCP)は世界の様々な地域で10団体程度のNGOによって実践されている新しい活動です。
この新らしい活動は過去数十年に亘り実践され認知されたものですが、1990年以来50を超える市民社会団体が35の紛争地域でUCPを展開してきました。
UCPは紛争地域のコミュニティに草の根レベルでの関わり合いを持ちながら、様々な期間(一般的に数カ月から数年間)で活動します。
UCPの主要な4つの手法は
- 積極的な関与
- モニタリング
- 関係構築
- 能力開発
です。それぞれの手法に幾つかの応用がありますが、それらは
- 保護的プレゼンス、保護的同行と割り込み
- 休戦監視、ルマー・コントロール、そして早期警報、早期対応
- 信頼構築、多層的対話と地域レベル調停
- トレーニングと地域の平和インフラ支援
であります。
国連の「平和活動調査ハイレベル委員会」は世界中の国連平和活動の調査を行っています。この調査においても同様に、市民が市民の直接保護に重要な役割を果たすことができ、且つ、果たしていることが明らかにされています。5月22日に発表が予定されているこの調査報告書をぜひご覧になってください。
皆さまに支援をお願いする第2点は、シリアにおける平和的転換のために活動しているシリア市民社会への支援です。今この時においてさえシリアにおいて勇敢なる男女が平和と和解のために活動していることをお伝えしたい。彼らは平和構築プロジェクトや局地的休戦のために活動しています。若い女性達によるあるグループは“平和大使”や“平和の橋”を立ち上げ、国内に6000人のネットワークを作っています。アレッポの平和構築プロジェクトでは、若者に焦点を当てて瓦礫の中から子供たちのための図書館作りのような建設的プログラムもあります。
シリア市民社会は、政府支持派、反政府派、中立の立場を問わず、政治的、宗教的そして地域的分裂を越えて支援されることを必要としています。彼ら(シリア市民社会)は、持続可能な将来のシリアの基盤を確実にするために必要不可欠な要素であります。尊敬される地域のリーダーシップを擁する強固な市民社会が存在するコミュニティでは、暴力的な過激派が根を下ろすことはより困難です。
米国は、米政府の資金援助による非暴力トレーニングに参加しようとする応募者の審査基準に関する現在の厳しい法規制や政策を変更する必要があります。市民社会の参加者間の橋渡しをし、強固にする必要がある今の時勢にあって、現在の手続きでは政治的、宗教的な壁を越えたグループを結集させることは困難です。
局地的な地域に根差したボトムアップの努力は暴力のレベルを緩和し、安全な避難場所を提供し、人道的援助へのアクセスを提供することが知られています。しかし、それだけでは切抜けて生きることはできません。この局地的な役割を強化、支援し、優先的な交渉プロセスにつなげる総合的なモデルが必要です。市民の保護と、暴力の中断と縮小のための国際的調停者やアドバイザーが提供されなければなりません。シリア人で構成された市民保護プロジェクト、女性平和維持チームや調停者達にはトレーニングと支援が必要です。
局地的な休戦は非暴力平和隊がミンダナオで実施したと同様な国際的監視員が必要です。KafarzitaやHamaでの事例のように、化学兵器の査察の期間、その場所へのアクセスのために局地的休戦が促進されました。このように、国際社会は休戦のための能力と政治的意思を示しましたが、更に人道的な目的のためにも、同様に行うべきです。
以下のことを提案し支援することによって、あなたがたは際限のない「(テロリストに対する)軍隊使用承認決議」(Authorizations of the Use of Military Force)を積極的に回避することができます。
- 平和と和解のために活動しているシリアの市民社会を支援し
- 局地的休戦、市民保護プログラム、暴力の抑止そして平和構築努力(特に女性達主導による)を提案し
- これらの局地的努力を優先的外交努力に統合するイニシアテブを提案し支援し、そして
- 非武装の市民保護活動家、監視団、調停団の導入を計る
ことです。
私はよく学生たちと話します。彼らの関心を引き出すために人間のバロメーター・テストを使います。それはこうです。教室の一方の壁を“賛成する”、反対の壁を“反対する”と設定して、学生達にスクリーン上の文字を見て、それぞれの意見に応じて場所取りをさせるのです。私が“我々の国は自分が生きている間は戦争している”とスクリーン上に映し出しますと、学生達は“賛成する”壁の方に集まります。若い学生ほど壁の近くに集まります。彼らは自分達が戦争状態に生きていると信じているのです。
議会は権威を回復する必要があります。議会が「(テロリストに対する)軍隊使用承認決議」を取り下げなければ、その効力は続きます。あなたがたは、2001年発効の「(テロリストに対する)軍隊使用承認決議」を投票によって無効にすることによって、新たな「(テロリストに対する)軍隊使用承認決議」に反対することによって、そして、それに代わるものとして市民の保護、局地的休戦と平和構築への勇気ある取り組みを提案することによって、若者たちがいつも戦争状態にいるといった諦めの境地から彼らを救いだすことができるのです。
注1
「テロリストに対する軍隊使用承認決議」
(Authorization for Use of Military Force Against Terrorists)
9.11事件を受けて2001年に議会が可決した「テロ組織に対する武力行使の承認」(AUMF)という合同決議による大統領権限
注2
原文のUCP(unarmed civilian protection:非武装市民保護)はすべて非武装市民平和活動(UCP:peacekeeper)と訳した。(大橋・訳)