非暴力平和隊実現可能性の研究【第4章 第4節】
第4章 非暴力平和隊の職員
マライケ・ユンゲ、ティム・ウォリス
4.4 NPに対する結論と推奨事項
4.4.1 NPボランティアに必要とされる資格と技能
- ここまで、ある役割に対して必要な特定の技能を定義するための試みがなされた。しかしながら、NPスタッフが果たすことを期待されているであろう特定の役割に関して決定がなされた時、これは、大いに論議する領域であり、さらに深く注意を向けるべきである。
- 大規模な介入は、広範囲な技能と異なったレベルの能力を必要とするであろう、ということは現実だと思われる、と言われている。
- そのような大規模な派遣団に対しては、人々が彼らの技能および経験に対して適切に配備され、適切に管理されることを確実にするために、階層的な意志決定機構および報告と状況説明の手順、進行中のスタッフ評価などを含め、スタッフ管理のための明確な方針が練られる必要がある。
4.4.2 NPボランティアを新規採用するために手を伸ばす戦略は何か?
- パイロットプロジェクトのための新人募集は、既存の人材プールとの協力の中でなされるべきである。
- 人の輪を作り直すよりはむしろ、これまで10年以上この活動を継続している他の組織の経験を利用するべきである(特に彼らの登録簿には、彼らが配備できる人数よりも多くの人々が登録されている傾向があるのだから)。
- このような文脈において接触すべきプログラム/組織は、CanademとNordem/NorstaffおよびUNVとVSOである。
- 明確な新人募集基準(人物の仕様、願書様式の設計)が定義されるべきであり、 (個人面接と評価のための候補者への接近と、容易なアクセスのため) 国のレベルで候補者の事前選別を実施することができるように、パートナー団体をいくつかの地理的な地域に見つけ出すべきである。最終選別はNPスタッフと共におこなわれるべきである。
- 長期的に、私たちはこの機能を充足することができるNPの地域事務所を展開させることを望むことになろう。
- さらに、NPプロジェクトが広く(ウェブサイト、メーリングリスト、新聞、ニュースレター、自己のウェブサイトなど)宣伝されるべきである。条項は、人々が願書をオンラインで書き、地域代表に提出するための規定が作られるべきである( UNVのシステム)。
4.4.3 私たちはどのようにしたら応募者を完全に評価することができるか?
NPは、特定の役割のための候補者の適性を評価するための手順として、英国のNVQシステムのような既存の評価システムを、どのように適合させることができたのか、を調査するべきである。PBIの感覚では、トレーニングは評価の一形式であり、適切な職員の選別に欠かすことはできない。しかし、トレーニングはそれ自体、目的への手段であるにすぎない。目的は、現地に適切な資格を持った職員を得ることである。トレーニングという手段のみによってこの目的をなし遂げることができる、と考えるのは誤りである。ある人々は、長年訓練しても、まだ不適切な場合があり、その一方で他の人はまったく何もトレーニングしなくとも適切であるかもしれない。評価は、誰が何に対して適しているのかを決定する手段である。それはまた、誰かのトレーニングに必要なのは何か、を決める手段でもある。
NPは、トレーニングについての推奨事項と関連して、この問題に関して慎重に考えるべきである。評価、トレーニング、および配置についてのモデル戦略は、付録 IIIとして含まれている。
4.4.4 チームのメンバーと家族に対して、NPはどのような支援を提供すべきか
- 配置についての明確な管理機構
- スタッフの 「ジュニア」メンバーにシニア・メンバーが付き、専門的な、あるいは個人的な事柄のいろいろなことについて相談できるパーソナル助言者システム
- スタッフと家族に対してある程度状況を知らせ、話を聞く集まり
- カウンセリングと再定住支援による心理的な支援
4.4.5 NPが提供すべき契約の種類: 報酬、手当、保険、社会保障
契約と報酬の一括条項に関して詳細な決定をするのは、おそらくまだ早すぎるであろう。 しかしながら、考慮する必要がある問題がいくつかある。
- NPスタッフは、勤続年数、地位、資格、扶養家族などに応じた支払いを受けるべきである。
- 社会保障あるいは年金計画の支払いを他国に移すこと、あるいはその支払を留保、もしくは類似の方式などに関して、国際的な規則のさらなる研究が必要である。
- 長期的に調査すべきもう一つの問題は、兵役あるいは陪審員と同じような身分、すなわち、NPの活動に従事している間、失業することなく休暇をとることが可能になるようにすることを平和活動にも与えるような取り決めを作り出すために政府と交渉することであろう。
- 雇用条件に関する諸問題のリストについては、付録 Iを参照のこと。
付録I
海外での労働者に対するサービス条件: 問題点
国際健康交換所によって発行された。「正道と不正: 英国に本拠をおく支援活動家のための雇用問題に関するガイドブック」(1997)から
- 雇用契約には以下の項目を含むべきである。
誰が雇用主であり、誰が直属管理者であるか、に関する明確化、特に、誰に責任があるのかが、明確でないことがあるパートナー組織への出向の場合について
活動の名称
以下の項目を含めた給料と手当:
どのように支払われるかの詳細
支払われる通貨は何か?
支払いは現地か自国か?
払い込まれるのは、現地の銀行口座か、国際的な銀行口座か?
勧誘に出席するのは有給か?
賃金はいつ、どのように見直されるのか?
日当は支払われるか?
任務の開始日と終了日
任務地への旅行はカバーされるのかどうか
同伴する扶養家族のための条項(もしあれば)
一般的職員問題:
規律と不服申立て:
健康と安全
安全保障 - トレーニング、勧誘、および帰国後の報告会は以下の項目を含むべきである。
居住し、活動することになる場所についての情報と勧告
活動することになるプロジェクトの詳細
あなたの代理機関 (ならびにパートナー機関) に関する一般情報
健康と安全問題についての勧告
安全保障情報とガイドライン
乗り物の使用と維持についてのトレーニング
通信装置の使用と維持についてのトレーニング
語学訓練あるいは通訳を利用する際のトレーニング
非常事態についてのトレーニング: たとえば、安全事故、応急処置、避難の取扱い - 税金について
英国の所得税法では、海外の労働者は少なくとも1年間は所得税を支払わなければならない(国によって違う)
税法の変更について最新版を雇用主に問い合わせること - 国民保険制度負担金(国によって違う)
たとえば、英国の居住者は、海外での最初の52週間は第1種分担金を支払う
その後は第2種分担金を支払うかどうかを選択でき、支払えば権利を保持できる
ボランティアは、海外にいる間、誰が第2種分担金を支払うのかを尋ねるべきである - 年金
雇用主は、海外にいる間、個人年金計画に支払うことができる
多くの支援組織には、雇用主年金計画がある
海外で働くために無給の休暇をとるのであれば、あなたは自国の年金計画に支払うことができないかもしれない - 保険
医療保険
生命保険
一時的/恒久的身体傷害保険
戦争地域あるいは紛争地域保険(必要あれば)
職業的弁償保険(訴えられることから守るため)
手回り品保険
旅行中通過する国すべてに対する保険? 家族も?
医療保険、生命保険、身体傷害保険により、どのようなレベルでカバーされるのか?
医療保険は、海外での雇用によって生ずる長期間にわたる治療あるいは補償帰国をカバーしているか?
知っておく必要がある何らかの免除条項はないか?
請求する必要が出た時にはどうするのか? - 病気休暇
病気休暇中の給与に責任があるのは誰なのかをチェックすること - 母性/父性休暇
どのくらいの休暇期間を得られるのか?
私は、産休手当(英国で一定期間以上勤務したあと産休をとった女性に雇用者が通算18週間支払う手当)をもらう資格を持っているか? これに関する責任を持っているのは誰か?
出産が早かったり、遅い場合に、休暇は影響されるか?
無給の休暇をとったならば、この組織は、私の年金に分担金支払いを続けるのか?
海外に残っているリスク(たとえば、抗マラリア薬を飲み続けるのか?)
より良い医療サービスを受けるための旅行費用は支払われるか? - 特別休暇
特別休暇はどのような状況の下で請求できるのか?
どのくらいの期間の休暇を得られるのか?
配偶者の近親者が死亡した時、彼/彼女にも特別休暇は与えられるのか?
私の旅行費用は支払われるのか? 私の家族の旅行費用はどうか? - 休日と作業時間
非常にストレスが多い期間の後で「休息とくつろぎ」の休暇をとれるか?
ある国から他の国に転勤する時、休暇をとれるか?
自分の休暇をすべて消化しない場合に、その代償は支払われるのか?
時間外勤務の代わりに代休をとれるのか? (あなたには、週40時間労働の権利は与えられないかも知れない、したがって、時間外勤務なり代休の権利は与えられないかもしれない; イスラム教国では、金曜日が休日であり、日曜日は稼働日である)。
派遣された国の外で休暇をとったならば、私は組織の保険証書でカバーされるのか?
毎年一回の帰国旅行の権利、あるいはその代わりに、家族があなたに会いに来るための無料チケットが与えられるかもしれない、それは派遣された国あるいは近くの国のいずれでも良い - 健康の世話
あなたとあなたの家族は、健康診断とすべての必要な予防接種を受けなければならない
あなたは歯医者にも訪れるべきである
あなたは、健康上のリスクならびに健康上の問題を回避するために採るべき予防策についての勧告を受けるべきである
海外での全滞在期間をカバーするだけの薬剤を受け取ること
マラリア区域で活動するのであれば、マラリア予防措置、蚊帳、虫除け、他の必要な薬剤、薬物、装置も受け取るべきである
年に一度および帰国時には健康チェックを受けることが望ましい。あなたの機関はそのための費用を支払うべきである
その地方の保健医療施設を評価するのに、どのような基準が用いられたかを見つけ出す価値があるかもしれない
到着次第、スタッフの健康管理職員がいるかどうか、あるいは医療の決定が事務所における最上位の先任スタッフ・メンバーによってなされるかどうかを調べること
途上国には、法的に強制できる健康と安全の規則がないかもしれない
いくつかの支援組織は、彼ら自身の健康と安全の規則を持っているが、持っていない組織も多い
雇用主に対して健康と安全の方針を持っているのかどうか尋ねること
それは何をカバーしているのか? たとえば、それは運転に対するガイドラインを備えているか?
健康と安全の基準が貧弱であると感じた時、誰に抗議できるのか? - 安全保障
その国あるいはその地域に特定した安全保障リスクの評価書面を受け取るべきである
あなたは自分の勧誘の間に、安全ガイドラインの支給を受けるべきである
到着次第、あなた個人の安全に影響するかもしれない主要な開発についての最新情報を受け取るべきである
緊急事態においては、どうするのか? を尋ねること
緊急時には本部事務所にどのように連絡するのか?
安全保障問題で最新情報を私に伝えるのは誰の責任か?
書面による避難計画はあるか? - 労働組合保護
自国の雇用法は、海外の労働者を保護していない。団体交渉協定はあなたに適用されないかもしれない。海外スタッフが直面している雇用問題についての経験を持つ労働組合はほとんどない
「Transport and General Workers Union」は、いくつかの機関との間で、海外の労働者に対して、英国のスタッフと同等の権利を与えるという合意に達した。
「Manufacturing Science and Finance Union」には、何人かの海外メンバーがおり、海外の支援労働者のための特別な部門を開くことを計画している。
支援を受ける人々のための最善のプラクティス・コード(1997 Code of Best Practice for People in Aid)(50以上の国際的な機関から支援を受ける原則声明:1997年)
原則声明:
- 私たちのために働いている人々は、私たちの有力さと成功と一体化している。
- 私たちの人的資源方針は、最善のやり方を目指す。
- 私たちの人的資源方針は、有効で、効率的で、公正であり透明であることを目指す。
- 人的資源方針を発展させる時には、私たちは現地スタッフと協議する。
- 計画と予算は、現地スタッフに対する私たちの責任を反映している。
- 私たちは適切なトレーニングと支援を提供する。
- 私たちは、スタッフ の安全と安寧を確実にするよう、すべての合理的手段を採用する。
訳者注
第4章はこの後に、付録II 国連願書様式 P11 および、付録III が続いているのですが、原文の打ち出しがうまくいっていないことが判明しましたので、一旦ここで中断します。