非暴力平和隊・日本

藤村陽子インドネシアレポート:No.8

No.8 2005年11月2日

PBI 藤村陽子

皆様、お元気ですか。インドネシアではまだまだ雨がよく降っています。日本ではもう秋が訪れ、気温もぐっと下がったことでしょうね。私は10月半ばから、急に胃潰瘍になってしまいつらい時期を送っていましたが、なんとか回復しつつあります。

先月の5日から、ムスリムたちにとってはとても大切な断食が始まりました。アチェではほとんどの人がイスラム教なので、本当に一大イベントです。昼間にあいている飲食店はほとんどありません(例外として最近できたアメリカのチーズケーキ屋は外国人用に開店しています)。友人に聞いたところ、断食中はすべての体の「穴」に何も入れてはいけないということなので、断食中に道端でタバコを吸う人もほとんどいません。断食は朝5時ごろから夕方の6時半までです。この間は先ほども述べたように、飲食はもとより、耳を掃除したり、歯を磨いたりすることも極力避けるようです。ただ、汚い話ですが、鼻をほじる人はちらほらみかけますが・・・。そんな断食も今日の11月2日が最終日で、明日、あさってと盛大な断食明け祭りがあります。ほとんどのムスリムは自分の田舎に帰り、家族と時間を共にします。なので、明日、バンダチェはかなり寂しくなるとのことです。

私たちのクライアントも、断食の際は仕事の量を減らしています。幸いにこの1ヶ月間大きな問題が彼らに起こったりすることもなく過ぎました。しかし、自由アチェ運動(Gerakan Aceh Merdeka/GAM)と軍隊や警察の間で小さな衝突があったり、あるGAMのメンバーが市民を脅してお金を奪おうとした事件がいくつかありました。しかし、アチェ監視ミッション(Aceh Monitoring Mission/AMM)の働きかけやその他団体の働きかけにより、平和合意を揺るがすような事態にはなっていません。しかし、GAMメンバーによる地元NGOへの脅迫事件が起こったときは、私たちも少し驚きました。実は私たちはその団体の代表をよく知っていたので、AMMに連絡をして協力をお願いしたり、状況をしらべたりとばたばたしていましたが、運良くほかの地元NGOがその地域のGAMの責任者に連絡をし解決に至りましたのでほっとしました。

GAMメンバーについてですが、8月15日の平和合意のあと、かなりたくさんの政治犯が釈放され、そして山に潜んでいたメンバーも武器を捨てて自分たちの村へ帰っていっています。町のいたるところに元GAMメンバーがいて、以前は会うことが警察によって禁じられていたので不思議な気分です。先日、友人の家に行くと、ピーディー県の元GAM責任者が偶然いたので少し会話をしました。彼は、彼の歴史や願っていることを語ってくれたので、とても貴重な体験でした。

10月21日から南アチェ県へ再び行く機会があり、そこで軍隊の一員と面白い会話をしました。彼はIntelといって外国人に関する仕事をする部署で働いているのですが、私と同僚に、「君たちにとって平和とは何か?」、「アチェは君たちの国と比べて平和か?」、「アチェの平和には何が必要か?」と次々に質問をし、私たちを試している様子でした。以前よく、警察や軍隊はこういった質問を外国人にして嫌がらせをしていましたが、彼がそういうつもりだったかはよくわかりません。ただ、彼を刺激しないように私たちは質問に答えましたが、彼は納得していないようで、「今夜ディスカッションしたいなら会ってもいいぞ。」といっていましたが、うまく回避しました。このミーティングのなかで、彼はアチェには警察や軍隊による人権侵害がひとつもないだとか、軍隊はアチェの平和を願っているのにGAMは乗り気じゃないとかいっていたので、ここが一番難しいところだなと思いました。

私は彼が本当にそう思っているとは思えませんが、本当に人権侵害の事実を知らないのか、目をつぶっているのか、それとも軍隊の威厳を守るためにそういったのかはわかりません。ただ、私たちはそれを否定しませんでした。しかし、平和合意が結ばれた今、みなが本当に平和を願っているなら、軍隊や警察は今まで見せていた傲慢さをやめ、自分の侵した罪を見直すべきだと思います。これはGAMのメンバーにも言えることです。しかし、私の中にも、警察や軍隊にはまだまだ少しいい顔をしなければならないんじゃないかという声もときどき出てきます。礼儀正しくし、敬うことと、いい顔をして顔色を伺うことは違うので、私も100%軍隊や警察に対して礼儀正しく、敬うことだけができるようになりたいと思います。

それでは皆様、お体に気をつけてご活躍ください。明日は盛大な断食祭りです。私も8日まで休みなので、たくさんの友人や知人の家々を回ってたくさんのご馳走を食べようと思います。

アチェの真の平和を願って・・・

藤村 陽子

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